被告人が第一、二審を通じて司法警察官に對してした自白は拷問強制によるものなりと強調し、その取調の状況を相當具体的に述べていても、他方公判廷において證人として取調べられた警察官らがさような事實がなかつたことを確信して居り被告人の右自白が全然強制によるものとも記録上認め難い場合においては、強制自白を證據とした違法ありとの上告理由はその前提たる事實を欠くものである。
強制自白なりとの上告理由とその前提たる強制の事實が記録上認められない場合
憲法38條2項,刑訴應急措置法10條2項
判旨
供述内容に日時や場所の食い違いがあっても、直ちにその全体を架空の事実と断定することはできず、また、被害者の観察の不正確さのみをもってその供述の信用性を否定することもできない。
問題の所在(論点)
供述内容の一部に食い違いや不正確な点がある場合、証拠能力や証明力の判断において供述全体を排斥すべきか。また、「鶏卵若干」といった抽象的表現による罪状認否が許されるか。
規範
被告人の自白や証人の供述において、日時、方角、犯人の身体的特徴等の細部に食い違いや不正確な点が含まれていたとしても、記憶や判断の特性に照らし、その一事をもって直ちに供述全体を架空・虚偽と断定することはできない。供述の信用性は、事案の性質や供述全体の文脈に照らして判断すべきである。
重要事実
被告人らは強盗罪に問われたが、共謀の日時や侵入口の場所に関する被告人ら自身の供述に食い違いがあった。また、被害者が犯人の身長や特徴を正確に認識していなかったことや、共謀時に準備した凶器と実際に使用された凶器が一致しない点、さらに盗品である「鶏卵若干」という表記の曖昧さなどが、供述の信用性や事実認定の違法として争われた。
事件番号: 昭和23(れ)1501 / 裁判年月日: 昭和23年12月24日 / 結論: 棄却
一 公判請求書記載の事實と原判示事實との間に被害物品について多少の差異があるとしても、具體的な窃盜の犯行そのものには異同がないのであるから、原判決は審判の請求を受けない事件について判決し若しくはこれを受けた事件について判決しなかつた違法はない。 二 判決の認定事實における日時と公訴事實における日時とがたまたま異つていて…
あてはめ
(1)共謀日時等の食い違いについて:人間は記憶や判断に過誤が生じやすいため、細部の不一致があるからといって直ちに全体が架空の事実であると即断することはできない。(2)被害者の供述について:強盗被害という緊迫した状況下で正確な観察を求めることは困難であり、特徴の認識が不正確であっても直ちに信用性を否定できない。(3)凶器の不一致について:共謀時に相談した凶器と実際に使用されたものが異なっても、共謀の成立を否定するものではない。(4)「鶏卵若干」の表記について:これは「数個」という事実を意味するものであり、空虚な概念ではないため、犯罪事実の摘示として欠けるところはない。
結論
原判決の証拠判断および事実認定に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の信用性や被害者供述の評価に関する基本的事例である。答案上は、供述に些細な変遷や矛盾がある場合に、それが「重要部分」か「細部」かを切り分け、後者であれば本判例の理屈を用いて信用性を維持する論法として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)498 / 裁判年月日: 昭和23年9月14日 / 結論: 棄却
一 検事が公判廷で原判決を引用して被告事件の要旨を陳述した場合に、その判決の摘示事実に、犯行の年月日について誤記があつても、起訴した公訴事実の同一性を害しないときは、右被告事件の陳述は適法である。 二 自首減輕をするか否かは、裁判所の事由裁量に任されているところであり、かかる事實ありとの主張が、刑事訴訟法第三六〇條第二…
事件番号: 昭和25(れ)1747 / 裁判年月日: 昭和26年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において事実誤認や量刑不当を主張することは、適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原審の判決に対し、事実誤認および量刑不当を理由として上告を申し立てた事案。弁護人も同様に、原判決における証拠の取捨選択や事実認定、量刑の不当性を主張して上告趣意を提出した。 第2 問題の所在(…