辯護人甲、乙の辯護届は被告人と連署のもとに、昭和二四年一〇月八日(原審第一回公判期日)當日の日附で提出されている。然るに兩辯護人に對する右公判期日の召喚状の送達も亦期日請書の提出のあつたことも記録上發見できないこと並びに甲辯護人は當日の公判に出廷しなかつたことも所論指摘のとおりである。しかし右辯護届は右公判期日當日裁判所に提出されたものと認むべきであるから、勿論右期日の召喚手續を爲す時間的餘地のないことは當然であり、且つ公判當日辯護届を提出するような場合には期日請書をも徴する暇のない場合も往々であり、その上元來辯護人はその辯護を引受くる時就中裁判所に辯護届を提出するような段階においては、既に被告人より或は裁判所に對し事件は如何なる進行の段階にあるや、殊に公判期日は既に定まつているか定まつているならば何日であるかは之を確かめるのを當然の筋合と謂わねばならないのである。そして本件被告人に對しては右一〇月八日の公判期日の召喚状は既に九月四日に適法に送達されているところであるから、甲辯護人は上示何れかの方法により該公判期日は之を十分に諒知しているものと云わねばならない。現に同一辯護届をもつて選任のあつた乙辯護人は當日召喚状は勿論期日請書の提出もないのに、右當日の公判廷に出廷し終始辯護の任に當つているのであつて以上のような場合においては召喚状の送達は勿論又期日の請書も之を必要としないものと解する相當とするのである。(昭和二四年(れ)第一六三一號、同年一一年一五日第三小法廷判決參照)
公判期日當日に辯護届を提出した辯護人に對し召喚状を送達することの要否
舊刑訴法320條2項
判旨
公判期日当日に選任された弁護人に対し、召喚状の送達や期日請書の徴収がなくても、当該弁護人が期日を十分に了知し得べき状況にある場合には、召喚手続に違法はない。任意弁護事件において、複数選任された弁護人の一部が出廷しないまま審理を遂げても、手続は適法である。
問題の所在(論点)
公判当日に選任された弁護人に対し、裁判所が召喚状の送達等の手続を履践しなかった場合、当該期日の審理手続は違法となるか。また、複数選任された弁護人の一部が欠席した状態で審理を行うことは許されるか。
規範
弁護人が選任される際、弁護人は事件の進行段階や公判期日の有無を確認すべき立場にあり、被告人への適法な召喚等を通じて期日を十分に了知していると認められる場合には、改めて弁護人に対する召喚状の送達や期日請書の提出を必要としない。また、必要的弁護事件でない限り、選任された弁護人の一部が出廷しなくても、他の弁護人が出廷して弁護権を行使しているならば、そのまま審理を進行させることは適法である。
重要事実
被告人は、原審の第一回公判期日(昭和24年10月8日)当日に、AおよびBの2名を弁護人として選任する弁護届を提出した。被告人自身には同年9月4日に適法な期日召喚状が送達されていた。当日、B弁護人は出廷して弁護活動を行ったが、A弁護人は召喚状の送達も期日請書の提出もないまま欠席した。原審はA弁護人不在のまま審理を進行させ判決を言い渡したため、被告人側が弁護人の召喚手続の不備および弁護人不在での審理を違法として上告した。
あてはめ
本件では弁護届が公判当日になされており、物理的に召喚手続を執る時間的余地がなかった。しかし、被告人本人には1ヶ月以上前に召喚状が送達されており、弁護人として選任を受ける段階で被告人等を通じて期日を確認することは当然期待される。現に、同時に選任されたB弁護人は召喚状等がないまま出廷し弁護権を行使しており、A弁護人も期日を十分に了知していたといえる。したがって、召喚状の送達等は不要である。また、本件は必要的弁護事件(旧刑訴法334条)に該当しないため、B弁護人が出廷している以上、A弁護人不在のまま審理を進めることに手続上の違法は認められない。
結論
原審の公判手続に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
弁護人の期日への出頭確保という観点から、弁護人が期日を実質的に知っている場合の召喚手続の省略を認める射程を持つ。もっとも、実務上は必要的弁護事件との区別に注意が必要であり、本判決は任意弁護事件において一部の弁護人が出廷している状況を前提としている点に留意すべきである。
事件番号: 昭和24(れ)1792 / 裁判年月日: 昭和25年1月26日 / 結論: 棄却
記録によれば原審において被告人の妻Aから被告人のため辯護人Bが選任させられていたことは所論の通りであるが、同辯護人の外被告人は辯護士Cを辯護人として選任していたのである。所論昭和二四年五月一八日の公判期日には右両護人に對しいずれも適法にその召喚状が送達されていたにも拘らず、B辯護人は何等理由を明らかにすることなく出頭せ…