なるほど、木炭の価格販売の統制額は昭和二五年三月一五日物価庁告示二〇七号によつて廃止されているが、犯罪後に物価統制令に基づく価格等の統制額が廃止されても旧刑訴法第三六三条二号に該当せず、行為時法によつて処罰せられるものであることは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第八〇〇号、同二五年一〇月一一日大法廷判決)とするところであるから、論旨は理由がない。
木炭の販売価格の統制額に関する告示の廃止と刑の廃止
旧刑訴法363条2号,昭和25年3月15日物価庁告示207号
判旨
物価統制令に基づく価格等の統制額が犯罪後に廃止されたとしても、刑法6条や刑事訴訟法337条2号(旧刑訴法363条2号)の「法律の改廃により刑が廃止されたとき」には該当せず、行為時法が適用される。
問題の所在(論点)
物価統制令に基づく価格統制の告示が犯罪後に廃止された場合、刑事訴訟法337条2号(旧刑訴法363条2号)にいう「法律の改廃により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきか。換言すれば、価格統制の廃止が法律の改廃と同視できるかが問題となる。
規範
特定の経済状況に対応するために制定された暫定的な統制規則(告示等)が、事情の変更により廃止されたにすぎない場合は、法令自体の改廃による刑の廃止(刑訴法337条2号等)には該当しない。したがって、行為時の法令を適用して処罰することが認められる(いわゆる「限時法」的解釈)。
重要事実
被告人は木炭の販売に関与したが、その取引価格が当時の統制額を超えていたとして物価統制令違反に問われた。その後、昭和25年3月15日の物価庁告示により、当該木炭の販売価格の統制額が廃止されたため、被告人は「法律の改廃により刑が廃止された」ものとして免訴されるべきであると主張した。
あてはめ
最高裁大法廷判決(昭和25年10月11日)の法理によれば、物価統制令そのものが廃止されたわけではなく、その一部である特定の品目の統制価格が告示により失効したにすぎない場合、それは事実上の変更に留まる。本件においても、木炭の統制額指定の告示が廃止されたことは、経済的情勢の変化に伴う措置であり、処罰の根拠となる法令自体の改廃には当たらない。したがって、行為時において禁止されていた行為としての違法性は否定されず、依然として行為時法によって処罰されるべきである。
結論
犯罪後の告示廃止は刑の廃止(免訴事由)には該当せず、上告は棄却される。被告人は行為時法により処罰される。
実務上の射程
司法試験の刑事訴訟法・刑法総論(刑罰権の存続)において、いわゆる「限時法」や「法令の改廃」の論点が出題された際に活用できる。価格統制の廃止のような「事実上の変更」と、道徳的・価値的評価の変更による「法律の改廃」を区別する際の判例の確立した態度として引用すべきである。
事件番号: 昭和25(れ)1145 / 裁判年月日: 昭和26年1月23日 / 結論: 棄却
一 原判決が確定した事実は被告人が統制額を超過する価額で甘藷を販売する目的でこれを所持していたという物価統制令第一三条ノ二違反の事実であつて、右事実を同条違反の罪に問擬する場合には、その行為の当時その物資に統制額が存すればよいので、その統制額を指定した告示の適用を判決において示す必要はない。 二 昭和二二年九月二八日物…