昭和二二年農林省令第一〇三号食糧管理法施行規則第一条において、政府に売渡すべき米麦等の数量、即ち所謂供出割当量につき、通知の外、公示を命じている精神は、当該市区町村部落における供述義務者全員の各供述割当量を一般に公知せしめ、もつてその割当が隠秘の裡情実等に流れず公正妥当に行われることを期したものと解すべきであるから、その公示方法につき法規上特別の定めがない以上は、右精神にもとらない方法に依拠すれば足るものと解するを至当とする。そして本件公示の方法については特に掲示板に公示しなかつたが、正式にきまつた各個人の供述割当表を帳簿に記載しそれを誰でも見られるように役場に備付けて置き何時でも部落民の閲覧に供していたのであるというのであつて右は公示方法として前説示の精神にもとるところはないものと認むるを相当する。
昭和二二年農林省令第一〇三号食糧管理法施行規則第一条第三項の供出割当量の公示方法
昭和22年12月30日農林省令103号食糧管理法施行規則1条3項
判旨
食糧管理法施行規則に基づく供出割当量の公示について、法規に特別の定めがない場合は、供出割当の公正を期するという制度趣旨に反しない方法であれば足り、帳簿の備付けによる閲覧提供も有効な公示となる。また、供出割当決定に不公正な疑いがあっても、所定の改訂手続がなされない限り、供出義務を免れることはできない。
問題の所在(論点)
1. 掲示板への掲示を行わず、帳簿の閲覧に供する方法による公示は、適法な公示といえるか。 2. 供出割当決定に不公正な点がある場合、直ちに供出義務を免れるか。
規範
行政庁による通知や公示の要件について、法規上特別の定めがない場合は、当該規定が目的とする「内容の公知による公正の確保」という趣旨に反しない方法によれば足りる。また、行政処分の効力については、たとえ内容に不公正の疑いがある等の瑕疵があったとしても、それが当然無効と解される場合を除き、所定の不服申立手続や改訂手続によって取り消されない限り、公定力により国民はその義務を免れない。
重要事実
被告人は食糧管理法に基づく米の供出義務を負っていたが、その割当数量の決定方法に不備があるとして争った。具体的には、割当数量の公示が掲示板への掲示ではなく、役場に備え付けられた帳簿の閲覧に供する方法で行われたこと、及び、農事実行組合長を通じて通知がなされたことの適法性が問題となった。また、被告人は割当数量の決定自体が不公正であると主張した。
あてはめ
1. 規則が公示を命じた精神は、割当量を公知にすることで情実を排し公正を期することにある。本件では、正式な割当表を帳簿に記載し、役場において誰でも何時でも閲覧可能な状態に置いていたのであるから、この精神に反しない適当な方法といえる。 2. 規則1条3項には改訂手続の定めがあり、当該手続が執られない限り、決定の不公正を理由に義務を免れることは法制度上認められない。
結論
本件の公示方法は適法であり、また改訂手続がなされていない以上、割当決定の不公正を理由に義務を免れることはできないため、被告人の上告は棄却される。
実務上の射程
行政上の公示方法に関する裁量を認めた点、及び行政処分の公定力(適法性の推定)を前提に、所定の手続によらない義務免脱を否定した点に意義がある。答案上は、公示の瑕疵の有無や、行政処分の効力を争う際の手続的限定を論じる際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)4905 / 裁判年月日: 昭和29年2月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧の供出割当が適法であり、かつ割当数量が実収高の範囲内である場合には、当該割当に基づく供出義務の不履行を処罰することは憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は食糧の供出割当を受けたが、これを違法無効であると主張し、かつ割当数量が自己の収穫した実収高を超えていると主張して、供出義務の不履行に…