判旨
公務員が具体的な職務執行を一時中断し、その再開に向けた準備や関連行為を行っている場合であっても、時間的・場所的連続性や行動内容に鑑み、職務執行の継続中と認められる限り、刑法95条1項の「公務を執行するに際し」に該当する。
問題の所在(論点)
公務員が暴行等により職務を一時中断して別の場所に移動している間に加えられた暴行が、刑法95条1項の「公務を執行するに際し」になされたものといえるか。
規範
刑法95条1項にいう「公務員が職務を執行するに際し」とは、公務員が職務を現に遂行している場合に限られない。職務の性質、行われた場所、時間的間隔、及び前後における行動等を総合的に考慮し、一連の職務執行の継続中と評価できる場合には、当該要件を満たすと解すべきである。
重要事実
被告人は、所得額の調査を行っていた大蔵事務官AおよびBに対し暴行を加えた。その後、Aらは署長への報告を行ったが、被告人の暴行により報告を一時中断せざるを得なくなり、執務室(直税課)に退避した。Aらが執務室の課長席で対談していたところ、30分も経過しないうちに被告人が再び現れ、Aの顔に煙草の火を押し付ける等の暴行を加えた。その直後、Aは再び署長室に戻り、署長との対談(職務の報告)を再開した。
あてはめ
本件において、A事務官に対する2度目の暴行は、署長に対する報告という職務執行が被告人の妨害によって一時中断され、執務室へ退避していた際に行われたものである。しかし、その時間は中断から30分以内という短時間であり、場所も同一庁舎内の執務室である。さらに、暴行の前後でA事務官が署長への報告を継続しようとしていた実態に鑑みれば、当該暴行は職務執行の継続中に行われたものと認められる。したがって、現に報告動作を行っていない時間帯であっても「公務を執行するに際し」に該当すると評価される。
結論
本件暴行は、公務員が職務を執行するに際して行われたものと認められ、公務執行妨害罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、公務執行の「継続性」を広く認める基準を示したものである。答案上は、職務の物理的な遂行が一時停止していても、①時間的近接性、②場所的関連性、③職務再開の意思や客観的状況を具体的事実から摘示し、一連の職務執行過程にあることを論証する際に活用すべきである。
事件番号: 昭和25(れ)1359 / 裁判年月日: 昭和25年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務執行妨害罪の成立には、公務員が公務の執行中であることを認識しつつ暴行を加えることが必要である。また、証拠の一部が他の証拠と矛盾する場合であっても、その一部を事実認定に援用することは採証法則に反しない。 第1 事案の概要:岡山市巡査Aが食糧管理法違反容疑者を逮捕しようとした際、被告人は同巡査に対…