第一審公判調書によれば同調書には「判事は公判請求書の公訴事実を読み聞かせ、この事実はどうかとの問に対して、被告人はその通り間違ありませんと答えた旨」の記載が存するのみであるから、原審がそれを証拠に供するには第一審公判調書の外公判請求書も読みきけこれが証拠調をしなければならないものといわねばならぬ。
被告人に読聞けず証拠調をもしないで採証した判決の適否
旧刑訴法336条,旧刑訴法338条,旧刑訴法340条,旧刑訴法410条19号
判旨
連続犯(旧刑法55条)を認めるにあたっては犯意の継続について証拠説明が必要であり、また同条廃止の前後を跨ぐ行為を一括して連続犯として処断することはできない。
問題の所在(論点)
1. 判決に事実認定の基礎となる証拠理由の不備があるか。 2. 連続犯(旧刑法55条)規定の廃止前後を跨ぐ数個の行為について、一括して同条を適用し連続一罪として処断することの可否。
規範
1. 罪となるべき事実に「犯意を継続して」との要件を追加する場合、当該事実を裏付ける証拠説明を要する。 2. 連続犯の規定(旧刑法55条)が廃止された場合、廃止前の行為と廃止後の行為を一括して連続一罪として処断することはできず、廃止前後の行為を区別して法律を適用しなければならない。
重要事実
被告人は昭和22年9月26日から同23年3月23日までの間、不正受配等の所為を行った。原審は、第一審判決の事実に「犯意を継続して」との文言を追加して連続犯として認定したが、その犯意の継続を裏付ける証拠説明を欠いていた。また、依拠した第一審公判調書の内容(自白)を確認するためには公判請求書等の証拠調べが必要であったが、これを行っていなかった。さらに、旧刑法55条が昭和22年11月15日に廃止されたにもかかわらず、その廃止前後を跨ぐ一連の行為全体に同条を適用して一罪とした。
あてはめ
1. 原審は「犯意を継続して」という重要事実を追加しながら、これに対応する証拠を挙示しておらず、証拠理由の不備がある。また、証拠とした第一審公判調書において「公訴事実の通り間違いありません」との供述があるのみであるなら、公判請求書等の証拠調べを併せて行わない限り、自白の内容を証拠として採用することはできない。 2. 本件行為期間中(昭和22年11月15日)に旧刑法55条は廃止されている。したがって、廃止前の行為に同条を適用して一罪とするのは格別、廃止後の行為まで含めて一括して連続犯として処断することは、法令の適用を誤ったものといえる。
結論
原判決には、証拠理由の不備および法令適用の違法があるため、破棄を免れない。事件を原審に差し戻す。
実務上の射程
現在は連続犯の規定自体が廃止されているが、包括一罪の認定において「単一の犯意」などの主観的要素を認定する際に、十分な証拠上の裏付けと理由記載が必要であることを示す。また、法改正を跨ぐ継続的・反復的行為に対する新旧法の適用関係の整理(法の不遡及や罪数判断)の視点として活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1583 / 裁判年月日: 昭和26年3月6日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】詐欺罪における欺罔の事実や犯意を認定するためには、証拠によって裏付けられた具体的な事実が必要であり、証拠に基づかずにこれらを認定することは許されない。 第1 事案の概要:被告人は、小麦粉の不当販売で取調を受けていたAから、警察官への運動を依頼された。第1の事実として、被告人は運動費を費消する意思が…