判旨
上告審において初めて主張された、原審が認定していない事実に基づく緊急避難の主張は、適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
原審において主張・認定されていない事実に基づき、上告審で新たに緊急避難の成立を主張することが、適法な上告理由となるか。
規範
上告審における事後審的性格に鑑み、原審において主張されず、かつ原判決が認定していない事実を前提とする違法性の阻却事由(緊急避難等)の主張は、採用することができない。
重要事実
被告人A漁業会代表者等による犯行について、原審では緊急避難(刑法37条)の主張はなされておらず、原判決においてもその前提となる事実は認定されていなかった。被告人側は、上告審に至り、当該犯行が緊急避難行為に該当する旨を主張し、これに関連して憲法39条違反をも訴えた。
あてはめ
弁護人が主張する緊急避難の事由は、原審において被告人側が主張したものではなく、かつ原判決の認定していない事実を基礎とするものである。上告審は原判決の当否を審理する場であるため、原審で現れていない事実に基づく主張は、審理の対象外であるといえる。したがって、前提となる事実自体が採用できない以上、これを前提とした憲法39条違反の主張も理由がないと解される。
結論
本件上告は棄却される。原審で主張・認定されていない事実に基づく緊急避難の主張は認められない。
実務上の射程
刑事訴訟における上告審の事後審的構造を示す。実務上、違法性阻却事由などの事実誤認や法令適用の誤りを争う際は、第1審・控訴審において適切に事実を顕出させておく必要があることを示唆する。
事件番号: 昭和25(れ)1587 / 裁判年月日: 昭和26年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下における上告において、被告人の主張が単なる事実誤認及び量刑不当に帰する場合、当時の特別法(刑訴応急措置法)に基づき、適法な上告理由にはあたらない。 第1 事案の概要:被告人が原審の判断に対して不服を申し立て、上告を提起した。しかし、その主張の内容は、原判決の認定した事実が誤っていると…
事件番号: 昭和26(れ)23 / 裁判年月日: 昭和26年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告趣意が単なる量刑不当の主張に帰する場合、それは刑法訴訟法上の適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決の量刑が不当であることを理由として最高裁判所に上告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):被告人が主張する「量刑不当」が、上告審における適法な上告理…
事件番号: 昭和26(れ)973 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認や量刑不当の主張は、刑事訴訟法上の適法な上告理由に当たらない。また、職権による判決破棄事由が認められない限り、上告は棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人Aおよび弁護人は、第一審・控訴審の判断に対し、事実誤認および量刑不当を理由として上告を申し立てた。弁護人は憲法違反も主張してい…
事件番号: 昭和27(あ)4849 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判の遅延(迅速な裁判の侵害)を理由として、憲法37条1項違反を直接の上告理由とすることは認められない。 第1 事案の概要:被告人が裁判の遅延を理由に憲法37条1項違反を主張して上告を申し立てた事案。なお、具体的な審理期間や遅延の経緯については、本判決文からは不明。 第2 問題の所在(論点):裁判…
事件番号: 昭和26(あ)5272 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として判例違反を主張する場合には、違反とされる判例を具体的に明示する必要があり、これを欠く主張は不適法である。また、刑の軽重の比較に誤りがあったとしても、それが判決に影響を及ぼさない場合には、原判決を破棄する理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し、判例違反および量刑不当…