記録に徴するに所論沒収物が犯人以外の者に属するものではないかとの疑ををおこさせるような事情もなくまた犯人以外の者に属すると認むべき証拠もない。かくの如く特別の事情もまた証拠のない限り判示事実に照らし本件沒収にかかる金槌は被告人以外の者に属しないと認めるを相当とする。そして原判決は、本件沒収物は被告人以外の者に属しない旨を明示していないが刑法第一九条二項を適用している点に鑑みれば右沒収物は被告人以外の者に属しないと認めた趣旨と解し得るから論旨は採用しがたい。(昭和二四年(れ)第三、一七九号同二五年七月四日第三小法廷判決昭和二二年(れ)第二五号同二二年一一月一四日第三小法廷判決参照)
沒収物が犯人以外の者に属しないと認むべき事例
刑法19条2項
判旨
証拠調べの必要性の有無は、裁判所の裁量に委ねられる。また、刑の減免事由である自首は、当時の刑訴法上、判決で特段の判断を要する事項ではない。
問題の所在(論点)
1. 裁判所による証人申請の却下は、被告人の防御権を侵害する違法な手続か。2. 判決において自首の成否に対する判断を明示しないことは、理由不備の違法にあたるか。
規範
1. 証拠調べを行うか否かは、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられる。2. 自首の事由は、旧刑訴法360条2項の「刑の加重減免の事由たる事実上の主張」には該当せず、判決でこれに対する判断を明示する必要はない。
重要事実
被告人は金槌でAの頭部を殴打した事案において、第一審で有罪判決を受けた。原審(控訴審)において、弁護人は証人申請を行ったが、裁判所は必要性がないとしてこれを却下した。また、被告人側は自首の成立を主張したが、原審判決はその点について特段の判断を示さなかった。被告人側は、証人申請の却下が弁護権の侵害であり、自首の判断遺漏が違法であるとして上告した。
あてはめ
1. 証拠調べの限度は事実審である原審が自由に決し得る事柄であり、原審が必要ないと認めて証人申請を却下したことは法則に反しない。憲法37条1項の「公平な裁判所」も裁判所の組織構成を指すものであり、申請却下はこれに抵触しない。2. 自首の主張は、当時の訴訟法上の「刑の加重減免の事由」としての法的判断を要する主張には当たらない。したがって、原審がこれに判断を示さずとも違法とはいえない。また、記録上、自首に関する証明書の取調べは行われており、審理が尽くされていないわけではない。
結論
原審の証拠採用の決定および自首の判断省略に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
裁判所の証拠決定に関する裁量権を認めた判例として、現在でも証拠調べ請求の必要性の判断において参照される。自首の主張に対する判断の要否については、現行刑訴法335条2項の「法律上刑の加重減免の理由となる事実の主張」との関係で検討すべきだが、裁量的減免事由(刑法42条1項)に関する判断の枠組みとして実務上意識される。
事件番号: 昭和25(れ)1178 / 裁判年月日: 昭和25年12月8日 / 結論: 棄却
所論のAについては、同人は第一審公判廷外において証人として喚問され、その訊問には弁護人が立会い(被告人は勾留中で立会つていない)所要の訊問を裁判長に求めていること記録上明瞭である。かようにこの証人の供述については既にその訊問調書作成の当時弁護人に対し反対尋問の機会が与えられているのであるから、右同人を第二審である原審が…