判旨
確定判決によって画される既判力の範囲は、併合罪の関係にある個別の犯罪事実には及ばず、確定判決前の余罪であっても併合罪となる以上、別罪として処罰することが可能である。
問題の所在(論点)
数個の賭博行為が併合罪の関係にある場合において、その一部について確定判決がなされたとき、当該判決の既判力は確定判決前の他の併合罪(余罪)に及ぶか。
規範
刑法55条の連続犯規定が廃止された(昭和22年法律第124号)後の運用において、数個の罪が併合罪(刑法45条前段)の関係にある場合、そのうちの一部の罪について確定判決を経たとしても、その既判力の効力は他の罪には及ばない。
重要事実
被告人Eは、昭和23年1月4日から10月22日頃までの間、賭博行為を反復していた。被告人は同年7月22日に賭博罪による罰金刑の確定判決を受けていたが、原審は、当該確定判決前の犯行のうち一部を単純賭博として併合罪の関係にあると認め、有罪を宣告した。これに対し被告人側は、確定判決の既判力がそれ以前の犯行すべてに及ぶと主張して上告した。
あてはめ
昭和22年11月15日の改正刑法施行以降、連続犯の規定は適用されない。本件において、昭和23年7月22日の確定判決以前に行われた各賭博行為は、それぞれ独立した併合罪の関係にある。既判力は確定判決の対象となった具体的犯罪事実にのみ及び、それと併合罪の関係にあるに過ぎない他の犯罪事実にまで及ぶ道理はない。したがって、確定判決前の行為であっても、既判力の範囲外として処罰を妨げない。
結論
確定判決の既判力は併合罪の関係にある他の犯行には及ばない。したがって、確定判決前の余罪を有罪とした原判決に違法はない。
実務上の射程
事件番号: 昭和24(れ)2416 / 裁判年月日: 昭和25年4月7日 / 結論: 棄却
賭博の前科の外に賭博常習性を認定する資料のある場合には、たといその前科の事實は十年以前のものであつても之を賭博常習性認定の資料に供することは差支えない。
連続犯規定廃止後の併合罪における既判力の範囲を画定した実務上重要な判断である。常習犯(包括一罪)の場合は確定判決により既判力が及ぶが、本判決のように個別の犯罪(併合罪)と解される場合には既判力が遮断されるという区別を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和25(れ)1453 / 裁判年月日: 昭和26年4月10日 / 結論: 棄却
常習賭博罪における数個の賭博行為は、包括して単純な一罪を構成する。