判旨
被告人の自白が拷問等の不当な手段により得られた疑いがある場合であっても、自白以前の否認供述等が任意になされたものであり、かつその内容が判決の結論に影響を及ぼさない場合には、自白の任意性の有無にかかわらず判決に影響はない。
問題の所在(論点)
被告人が自白に至る過程で拷問等の不当な取り調べがあったと主張する場合において、自白前の否認供述等の証拠能力や、当該主張が判決の結論に及ぼす影響が問題となる。
規範
被告人の供述が拷問、脅迫等の不当な手段によりなされた疑いがある場合、その自白の証拠能力は否定されるべきであるが、判決に影響を及ぼさない範囲の事由については、上告理由として採用されない。また、自白に至る前の否認供述等が不当な手段に基づかないものであれば、その証拠価値は別個に判断される。
重要事実
被告人は殺人事実について第一回から第四回までの聴取書作成時には否認を続けていたが、第五回聴取書作成時に初めて司法警察官に対して自白した。被告人は、この自白が司法警察官による強制、拷問、または脅迫によるものであると主張してその証拠能力を争った。一方で、自白前の否認供述については、拷問等によるものであるとの主張はなされていなかった。
あてはめ
被告人は自白に至った事情として拷問等の事実を主張しているが、自白以前の司法警察官に対する否認供述までが同様の不当な手段によるものであるとは主張していない。また、記録上も自白以前の供述が強制等によるものとは認められない。そうであるならば、仮に後の自白に不当な事情があったとしても、自白前の供述の評価を左右するものではなく、原判決の結論に影響を及ぼさない。
結論
被告人の自白の任意性に関する主張は、判決に影響を及ぼさないため、上告理由には当たらない。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(れ)1745 / 裁判年月日: 昭和26年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】警察段階で拷問があったと主張される場合であっても、原判決が当該供述を証拠として採用していない以上、判決に証拠上の違法は認められない。 第1 事案の概要:被告人が警察署において拷問を受けた旨を主張し、証拠の違法性を争った事案である。しかし、原判決を確認すると、警察段階での被告人の供述は一切証拠として…
自白の任意性が争われる事案において、客観的に見て自白以外の証拠や自白前の否認等の状況から結論が維持できる場合には、任意性の判断を回避しつつ有罪を維持する構成を示唆する。ただし、現代の刑事訴訟法下では、違法収集証拠排除法則や虚偽排除の観点から、より厳格に任意性の有無が審理されるべき点に注意が必要である。
事件番号: 昭和26(あ)3637 / 裁判年月日: 昭和26年12月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認または量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条に規定される適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が、原判決の事実認定に誤りがあること(事実誤認)、および言い渡された刑が重すぎること(量刑不当)を理由として上告を申し立てた事案。 第2 問題の所在(論点):刑事訴訟法4…
事件番号: 昭和57(あ)1505 / 裁判年月日: 昭和58年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による冒頭陳述の内容が不相当であっても、直ちに判決に影響を及ぼすべき法令違反となるわけではない。 第1 事案の概要:被告人が自白の任意性や補強証拠の存否、量刑不当等を理由に上告した事案。弁護人は、検察官の冒頭陳述の中に不適切な部分があり、また原判決が余罪を処罰する趣旨で量刑を行ったことが判例…
事件番号: 昭和25(あ)1225 / 裁判年月日: 昭和25年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の量定に関する不当の主張は、刑事訴訟法405条に規定された適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:弁護人が原審の刑の量定を不服として上告を申し立てた事案であるが、具体的な犯罪事実や原審の判断内容の詳細は、本判決文からは不明である。 第2 問題の所在(論点):原審が裁量権の範囲内で行った…
事件番号: 昭和25(れ)1449 / 裁判年月日: 昭和26年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認を理由とする上告は、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、弁護人が主張した上告趣意の内容は事実誤認を主張するものであった。 第2 問題の所在(論点):事実誤認の主張が、当時の刑事訴訟手続(刑事訴訟法応急措置法等)…