判旨
憲法が保障する裁判を受ける権利は、偏頗でない公平な組織構成を有する裁判所の裁判を受ける権利を意味する。必要弁護事件に該当せず、かつ被告人からの選任請求がない場合、弁護人を選任するか否かは裁判所の裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
1. 証人喚問の不実施等が憲法の保障する「裁判を受ける権利」の侵害に当たるか。2. 被告人が私選弁護人を解任し、かつ選任請求を行わなかった非必要弁護事件において、弁護人の立ち会いなく審理を行うことは違法か。
規範
1. 憲法上の「裁判を受ける権利」とは、偏頗の恐れのない公平な組織構成を有する裁判所の裁判を受ける権利を指す。2. 必要弁護事件(旧刑訴法334条)に該当しない事件において、被告人から弁護人の選任請求(刑訴応急措置法4条)がない限り、弁護人を選任して審理に立ち会わせるか否かは裁判所の合理的な裁量に属する。
重要事実
被告人は、原審(控訴審)の第2回公判期日に、自身で選任した弁護人の解任届を提出した。しかし、その後被告人から新たに弁護人の選任を請求した形跡は記録上認められなかった。原審は、本件が必要弁護事件に当たらないと判断し、弁護人が立ち会わないまま審理を継続した。これに対し被告人側が、証人喚問の不実施や弁護人の不存在が裁判を受ける権利を侵害し違憲であるとして上告した事案である。
あてはめ
1. 証人が喚問されなかったことが量刑に影響を及ぼすとしても、それは裁判所の組織構成の公平性とは無関係であるため、裁判を受ける権利の侵害には当たらない。2. 本件は法規上の必要弁護事件ではなく、被告人による選任請求もなされていない。このような状況下では、弁護人の選任は裁判所の裁量事項である。裁判所が必要なしと判断して審理を進めたことに違法性は認められない。
結論
憲法違反および刑事訴訟法違反のいずれも認められず、上告は棄却される。非必要弁護事件において選任請求がない限り、弁護人不在の審理も適法である。
事件番号: 昭和26(あ)1999 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、裁判所に対し、被告人側から申請された証人をすべて尋問する義務を課したものではなく、必要性がないと判断される証人の尋問を却下しても同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、銃砲等所持禁止令違反等の罪に問われた事案において、特定の証人尋問を申請したが、裁判所によって採用され…
実務上の射程
憲法32条の「裁判を受ける権利」を組織的公平性の観点から定義した初期の重要判例である。答案上は、弁護人の立会権や被告人の防御権の限界、および裁判所の訴訟指揮権・裁量の範囲を検討する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)2588 / 裁判年月日: 昭和25年3月14日 / 結論: 棄却
憲法が刑事被告人に辯護人を依頼する權利を認め、辯護權を尊重していることは所論の通りである。しかし憲法はまた、刑事裁判が迅速になされることをも要求しているゆえ、裁判所は刑事々件の公判期日を辯護人のたび重なる變更申請によつて際限なく延期しなければならないものではない。たとい、公判期日の變更申請が辯護人の他の裁判所における訴…
事件番号: 昭和25(れ)1218 / 裁判年月日: 昭和25年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項の「公平な裁判所」とは組織や構成が中立的な裁判所を指し、同条2項は裁判所の証拠採否に関する裁量を妨げるものではない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において証拠調べの範囲や限度につき不当であると主張し、憲法37条1項および2項に違反するとして上告した事案。原審において特定の証拠調…
事件番号: 昭和26(れ)2040 / 裁判年月日: 昭和27年3月13日 / 結論: 棄却
判決言渡期日に被告人、弁護人を召喚しなかつた違法があつても、被告人が自白しておつて、弁護人も犯情について弁論したに止まり、被告人も別に陳述することがないとして弁論が終結された場合には、その違法は判決に影響があるとはいえない。
事件番号: 昭和24(れ)1330 / 裁判年月日: 昭和24年11月1日 / 結論: 棄却
しかし裁判所は健全な合理性に反しない限り、自由裁量の範圍で適當に證人申請の取捨選擇をすることができるものであつて憲法第三七條第二項が裁判所は被告人側の申請にかゝる證人の凡てを取調べる義務を有するという意味でないことは、既に當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第八八號同年六月二三日大法廷判決)に示されている通りである。