判旨
裁判所が公判廷外で証人訊問や次回期日の指定を行った場合、弁護人に対し適法な召喚手続や通知を行わずに審理を進めることは、不当に弁護権を制限するものであり、被告人による弁論放棄の意思表示によってもその瑕疵は治癒されない。
問題の所在(論点)
裁判所が公判廷外で期日指定等を行った場合において、一部の弁護人に対する召喚・通知を欠いたまま審理を進めることが弁護権の不当な制限に当たるか。また、被告人による弁論放棄によって当該手続の瑕疵が治癒されるか。
規範
公判期日の指定が公判廷外でなされた場合、当該期日に出頭しなかった弁護人に対し、適法な召喚手続や証人訊問の日時・場所の通知を欠いたまま審理を進めることは、不当に弁護権の行使を制限するものであり許されない。また、かかる召喚手続の欠如という手続上の瑕疵は、被告人による弁論放棄の陳述によって治癒されるものではない。
重要事実
被告人の弁護人として高山弁護士と柴田弁護士の2名が選任されていた。第1回公判で指定された第2回公判期日に高山弁護士は出頭せず、裁判所は次回期日を追って指定する旨を宣して閉廷した。その後、裁判所は「法廷外」で証人訊問の実施を決定したが、高山弁護士には証拠決定謄本を送達せず、同弁護士不在のまま証人訊問を実施した。さらに、第3回・第4回公判期日の指定も「法廷外」で行われたが、高山弁護士には召喚状を送達しなかった。第4回公判において、被告人は高山弁護士の弁論を放棄する旨を述べ、審理が終結された。
あてはめ
本件では、証拠決定および公判期日の指定がいずれも公判廷外で行われている。そのため、高山弁護士は、仮に適法に召喚された公判期日に出頭していたとしても、証人訊問の日時・場所を知り得ず、立ち会う機会を与えられなかった。また、証人訊問調書の証拠調べが行われた公判期日についても適法に召喚されていない。これらは弁護権の行使を不当に制限するものといえる。また、被告人が同弁護人の弁論を放棄する旨を述べたとしても、召喚なしに審理した重大な手続上の瑕疵は、被告人の陳述のみで治癒されると解することはできない。
結論
弁護人に対する召喚手続を欠いたまま行われた公判手続には不当な弁護権制限の違法があり、被告人の弁論放棄によっても瑕疵は治癒されないため、原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
数人の弁護人がいる場合でも、各弁護人に対する適法な召喚手続が必要であること、および公判廷外での期日指定の際には告知が不可欠であることを示す。被告人の意思(弁論放棄)による手続瑕疵の治癒を否定する判断として、適正手続の保障を重視する場面で活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)1062 / 裁判年月日: 昭和24年10月11日 / 結論: 棄却
第一回公判期日につき辯護人に對し適法な召喚手續がとられている以上同公判期日に同辯護人が出頭しない場合は特別の事情がない限り裁判所が公判廷において次回公判期日を指定告知すれば足り不出頭の辯護人に對し重ねて舊刑事訴訟法第三二〇條の召喚手續をする必要なく第二回公判以後の公判期日についても順次同様であることは大審院判例の示すと…