判旨
刑の執行猶予を言い渡すべき情状は、判決に理由を付すべき「法律上刑の減免の原由たる事実」には該当しない。したがって、原判決が執行猶予の成否に関する情状の判断を示さなかったとしても、判決理由の不備という違法には当たらない。
問題の所在(論点)
刑の執行猶予を言い渡すべき情状の主張が、判決に理由を付すべき「法律上刑の減免の原由たる事実上の主張」に該当するか、また、これに対する判断を示さないことが絶対的上告理由となるか。
規範
旧刑事訴訟法360条2項(現行法335条2項参照)に規定される「法律上刑の減免の原由たる事実上の主張」とは、法律上の刑の減軽または免除の原因となる事由を指す。刑の執行猶予の適否に関する情状は、裁判所の裁量に属する事項であり、当該事実上の主張には含まれない。
重要事実
被告人が刑の執行猶予を言い渡すべき情状がある旨を主張したが、原判決はその情状についての具体的な判断を示さなかった。これに対し弁護人は、判決に理由を付すべき事項の不備(旧刑訴法410条20号、現行法378条4号参照)があるとして上告した。
あてはめ
判例によれば、執行猶予の情状は法律上の刑の減免事由ではない。本件において、原判決が被告人の主張する情状について判断を明示しなかったとしても、それは「法律上刑の減免の原由たる事実上の主張」に対する判断を遺脱したものとはいえない。したがって、判決理由の不備という形式的違法は存在しないと解される。
結論
執行猶予の情状は法律上刑の減免の原由たる事実に当たらないため、原判決に理由不備の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
現行刑訴法335条2項の「法律上刑の減免の原由となる事実の主張」の解釈においても同様の理が妥当する。実務上、弁護側が酌量減軽や執行猶予を求めて情状を主張しても、裁判所がそれら一つ一つに理由中で詳細に答える義務はないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和25(れ)1264 / 裁判年月日: 昭和25年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が刑の執行を猶予しないことは、裁判所の広範な裁量に委ねられており、それが直ちに法令違反となることはない。 第1 事案の概要:被告人が刑の執行猶予を付されなかったことに対し、弁護人が原判決の判断には法則に反する点があると主張して上告を提起した事案。判決文からは具体的な犯行態様等の事実は不明であ…