判旨
物価統制令違反の行為があった後に、統制額を指定した告示が廃止されたとしても、刑法6条及び刑事訴訟法(旧法)の規定する「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には該当しない。
問題の所在(論点)
物価統制令に基づく価格指定告示の廃止が、刑法6条や刑事訴訟法(本件では旧刑訴法363条2号)にいう「犯罪後の法令に因り刑の廃止ありたるとき」に該当し、免訴の事由となるか。
規範
特定の価格等への指定が告示によって解除・廃止されたとしても、それは単なる事実の変化に応じた政策的措置にすぎず、当該行為を処罰する根拠となる基本法令(物価統制令等)自体が廃止されたり、その罰則が改廃されたりしない限り、刑法6条や刑事訴訟法の「刑の廃止」にはあたらない。
重要事実
被告人は、木炭の価格を制限する物価統制令に違反する行為を行ったとして、昭和24年12月13日に第一審(または控訴審)で有罪判決を受けた。しかし、上告審継続中の昭和25年3月15日に、物価庁告示第207号によって木炭の統制価格自体が廃止されたため、被告人は「犯罪後の法令により刑が廃止された」として免訴を主張した。
あてはめ
本件における木炭の統制価格の廃止は、物価統制令という基本法令の変更ではなく、同令に基づく具体的な指定内容(告示)の変更にすぎない。これは経済情勢の変化に伴う事実上の措置であり、行為時の違法性を否定するような「刑の廃止」という法的評価の変更には当たらないと解される。したがって、原判決が廃止前の事実を捉えて有罪とした判断は妥当である。
結論
告示の廃止は「刑の廃止」には該当しないため、被告人を免訴すべき理由はない。本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
いわゆる「限時法」や「事実の変更」の理論に関する重要判例。基本法令の罰則規定自体が存続し、委任に基づく細則(告示等)のみが変更された場合、その変更が反省的考慮によるものでない限り、遡及的な有利な適用は否定される。答案上は、法令変更が「事実の変更」にすぎないか「法的な評価の変更」であるかを区別する基準として用いる。
事件番号: 昭和25(れ)1504 / 裁判年月日: 昭和26年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令に基づき販売価格の統制額を指定した告示が廃止されたとしても、それは旧刑事訴訟法363条2号(現行刑事訴訟法337条2号)にいう「刑の廃止」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、素干わかめの取引に関し、公定価格を超える価格で取引を行ったとして物価統制令違反に問われた。当該取引が行わ…