判旨
共謀に基づく強盗において、一部の者が暴行・脅迫により被害者の反抗を抑圧している間に、他の共謀者が財物を奪取した場合には、奪取行為に直接関与していない者も強盗既遂の罪責を負う。
問題の所在(論点)
共謀者の一部が暴行・脅迫を担当し、他の共謀者が財物の奪取を担当するという役割分担がなされた場合、奪取行為を直接行っていない者についても強盗既遂罪(刑法236条1項)が成立するか。
規範
二人以上の者が特定の犯罪を行うことを共謀し、その共謀に基づき、一部の者が実行行為に出た場合、実行行為を分担していない者であっても、共謀関係に基づく正犯としてその全責任を負う(共謀共同正犯)。強盗罪においては、暴行・脅迫による反抗抑圧と財物の奪取が一体として強盗の実行行為を構成するため、分担のいかんを問わず、共謀の範囲内であれば既遂の責任を免れない。
重要事実
被告人は、共謀者Cと共謀の上、被害者Aに対し、その反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫を加えた。被告人がAの反抗を抑圧している間に、共謀者CがAの所有する自転車1台を奪取した。被告人自身は、自転車を奪い取るという奪取行為そのものには直接関与していなかった。
あてはめ
本件において、被告人は共謀者Cと強盗の共謀を遂げている。被告人は暴行・脅迫という強盗の実行行為の一部を分担し、被害者の反抗を抑圧しており、その間に共謀に基づきCが財物を奪取した。このような実行行為の分担は、共謀に基づく一つの強盗行為を構成するものである。したがって、被告人が直接奪取行為に関与していないとしても、共謀関係及びそれに基づく暴行・脅迫の事実がある以上、強盗罪の全体について正犯としての責任を負うと解される。
結論
被告人は、直接奪取行為に関与していない場合であっても、強盗既遂の責を免れない。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立を認めた初期の重要判例。答案上では、実行行為の一部(暴行・脅迫)のみを担当した者の罪責を論じる際、共謀・共謀に基づく実行(役割分担)・正犯意思の要件を検討した上で、本判例を根拠に強盗既遂罪の成立を肯定する形で用いる。
事件番号: 昭和26(あ)1537 / 裁判年月日: 昭和26年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立において、実行行為に直接関与していない者であっても、共謀の事実が認められ、その共謀に基づき犯罪が実行された場合には、共同正犯としての責任を負う。 第1 事案の概要:被告人は、共謀共同正犯の成立を認めた原判決に対し、事実誤認等を理由に上告した。一審判決および原判決は、検察事務官に対…