判旨
弁護人が選任されていない訴訟手続において、弁護権行使の制限という問題は生じ得ない。公判調書に弁護人が弁論した旨の記載があっても、それが誤記と認められる場合には、選任の事実は否定される。
問題の所在(論点)
弁護人が選任されていない状況において、弁護権の制限という違法事由が生じ得るか。また、公判調書の記載と異なる事実認定が可能か。
規範
弁護権の制限が違憲または違法として問題となるためには、前提として適法な弁護人の選任が存在しなければならない。公判調書の記載と実態が異なる場合、それが明白な誤記であれば、実態に基づいて弁護人選任の有無を判断する。
重要事実
被告人両名が弁護権制限の違法を主張して再上告した事案。第二審の公判調書には弁護人が弁論した旨の記載があったが、原判決は、実際には第二審において被告人等の弁護人が選任された形跡は認められないと判断した。
あてはめ
本件第二審においては、客観的に弁護人が選任された形跡が認められない。公判調書に弁護人が弁論した旨の記載があるものの、これは誤記であると認められる。したがって、弁護人が存在しない以上、その弁護権を制限するという事態は論理的に起こり得ない。
結論
弁護権制限の違法は存在せず、再上告は理由がないとして棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟における弁護権の保障(憲法37条3項)の前提条件を確認するものである。公判調書の証明力(刑訴法52条)が問題となる場面において、明白な誤記がある場合に実態判断が優先される可能性を示唆するが、本判決自体は旧法下の簡潔な判断である点に留意が必要である。
事件番号: 昭和25(あ)3117 / 裁判年月日: 昭和27年7月8日 / 結論: 棄却
原審が弁護人古明池為重の第一回公判期日の変更申請はこれを許容したが、第二回公判期日の変更申請はこれを許容しなかつたこと及び同弁護人が右公判期日に立ち会わなかつたとしても、右期日に新たに選任された国選弁護人によつて被告人自身が選任した古明池弁護人提出の控訴趣意書に基ずく弁論がなされたこと、その控訴趣意書の内容も特に新たな…