判旨
単に懲役刑の執行延期を求めるのみで、原判決の違法を主張しない上告趣意は、刑事訴訟法上の適法な上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
原判決の違法を主張せず、単に刑の執行延期を懇請するだけの主張が、刑事訴訟法(本件当時は旧法446条関連)上の適法な上告理由に当たるか。
規範
上告趣意は、原判決の違法(法令違反や著しい不当等)を具体的に主張するものでなければならず、単なる刑の執行猶予や延期の懇請は、判決自体の違法性を問うものではないため、適法な上告理由として認められない。
重要事実
被告人が原審で言い渡された懲役刑の執行について、その延期を求めて上告を申し立てた事案。上告趣意書の内容は、刑の執行を遅らせてほしいという請願に留まるものであった。
あてはめ
本件において、被告人が提出した上告趣意の内容を検討すると、結局は原審で言い渡された懲役刑の執行延期を懇請するのみであった。これは、原判決における事実に誤認があることや、適用された法令に誤りがあること、あるいは量刑が著しく不当であることなどの「原判決の違法」を主張するものではない。したがって、法が予定する上告理由の形式を備えていないといえる。
結論
本件上告趣意は適法な上告理由とならないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法405条各号所定の上告理由(憲法違反、判例違反)や同法411条各号の事由に該当しない、単なる情状の訴えや執行に関する不服は上告理由として不適格であることを示す。実務上は、上告趣意書の不備による棄却(刑訴法408条参照)の論理的根拠として機能する。
事件番号: 昭和26(れ)182 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行延期を求める訴えは、刑事訴訟法における適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が、宣告された刑の執行を延期されたい旨を主張して上告を提起した事案。 第2 問題の所在(論点):被告人が主張する「刑の執行の延期」の要望が、刑事訴訟法(および刑訴施行法が準用する旧刑事訴訟法)上の適…