原審が判示犯行当時魚粕等の販売価格の統制額を指定していた告示として本件に適用した物価庁告示第一〇五三号は昭和二三年八月一日物価庁告示第六七三号により廃止され、これと同時に新統制額の指定がなされ、次いで右告示も同二五年四月二〇日同庁告示第三〇三号により廃止されるに至り、現在においては魚粕等の販売価格については何等統制額の指定なき状態にあることは認められる。しかし、一旦成立した物価統制令違反罪の処罰が、爾後におけるかかる告示の改変廃止により何等左右せらるべきものでないことは勿論である。
魚粕等の統制額に関する告示の廃止と旧刑訴法第三六三条号第二号にいわゆる「刑ノ廃止」
物価統制令3条,昭和23年8月物価庁告示673号,旧刑訴法363条2号
判旨
物価統制令違反の罪は、行為後に統制額の指定を定めた告示が廃止され、現在において統制額の指定がない状態に至ったとしても、刑法6条による処罰の免除を受けるものではない。法令の改変が単なる事実上の変遷に基づく場合には、行為時の法令が適用され、処罰は左右されない。
問題の所在(論点)
行為後に処罰の根拠となっていた告示が廃止され、統制が撤廃された場合、刑法6条(法律の変更)により、処罰を免れることになるか。いわゆる「限時法」や「事実上の変更」の解釈が問題となる。
規範
犯罪後の法令の改変が、法律学的な見地からする法律(刑罰規範)の変更ではなく、時勢の変遷等の外的な事情の変化に対応した単なる事実上の変更にとどまる場合には、刑法6条(刑の軽重の比較)の適用はなく、行為時の法令に基づいて処罰される(事実上の変更の理論)。
重要事実
被告人両名は、物価統制令に違反する行為(魚粕等の販売価格の統制額超過)で起訴された。犯行当時に適用されていた物価庁告示(第1053号)は、その後の告示によって廃止・改定され、さらに最終的には後続の告示も廃止された。その結果、裁判時においては魚粕等の販売価格について何ら統制額の指定がない状態となっていた。
あてはめ
本件における告示の廃止は、物価統制という政策上の目的を達成するための手段である統制額が、経済情勢の変化等に伴い改変・撤廃されたものにすぎない。これは、刑罰規範自体の反省的考慮に基づく法律の変更ではなく、単なる事実上の変遷に基づく告示の改変である。したがって、一旦成立した物価統制令違反罪の処罰は、その後の告示の改変廃止により左右されるものではない。
結論
本件各上告を棄却する。告示の廃止は刑法6条の「法律の変更」には当たらず、被告人を無罪とすることはできない。
実務上の射程
行政上の規制違反(特に経済犯罪や交通規制など)において、行為後に規制内容が緩和・撤廃された場合に「事実上の変更」として行為時法を適用する際のリーディングケースである。答案上では、刑法6条の適用を論じる際に、法律の変更が「反省的考慮」に基づくものか「事実上の変更」にすぎないかを区別する指標として用いる。
事件番号: 昭和25(あ)1110 / 裁判年月日: 昭和26年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の罪が成立した後に統制額指定の告示が廃止されたとしても、既に成立した犯罪の可罰性は左右されない。 第1 事案の概要:被告人は、物価統制令に基づく統制額を超える価格で取引を行ったとして、同令違反の罪に問われた。しかし、当該犯罪の成立後、公判審理等の過程において、対象となっていた統制額を…