判旨
控訴審において、裁判長が被告人に対し証拠に関する意見や利益となる証拠の提出を促したにもかかわらず、被告人が特段の主張や立証を行わなかった場合には、手続上の違法は認められない。
問題の所在(論点)
控訴審の手続において、被告人に対する証拠意見の聴取および証拠提出の催告が適切に行われたといえるか。また、被告人がこれに応じなかった場合に、刑訴応急措置法等に規定される適正手続に反する違法があるか。
規範
裁判所が被告人に対し、証拠についての意見や弁解を求め、かつ利益となる証拠の提出を促すという適正な手続を履践している場合には、被告人が自らその機会を放棄した以上、手続規定に反する違法は存在しない。
重要事実
原審(控訴審)の第1回公判において、裁判長は被告人に対し、証拠に関する意見や弁解を求め、さらに被告人の利益となる証拠の提出を促した。これに対し、被告人は公判調書において「別段意見弁解はなく利益の証拠もない」旨を述べ、自ら主張・立証の機会を行使しなかった。
あてはめ
記録上の公判調書によれば、裁判長は被告人に対して証拠の意見弁解や利益となる証拠の提出を促しており、手続的保障を与えている。被告人がこれに対し自発的に「意見も証拠もない」旨を回答したことは、手続上の機会が十分に提供されたことを意味する。したがって、法が求める適正な訴訟手続を欠いた事実は認められない。
結論
原審の手続に刑訴応急措置法等に反する違法はなく、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
裁判所が法的義務として被告人に主張・立証の機会(証拠意見の聴取等)を付与した実態がある以上、結果として証拠が提出されなくとも手続的瑕疵とはならないことを示す。公判調書の記載が手続の適法性を担保する重要事実となる。
事件番号: 昭和47(あ)1011 / 裁判年月日: 昭和47年9月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】供述調書の任意性については、記録上の証跡に照らして判断されるべきであり、任意性を疑うべき証跡が認められない場合には、証拠能力が認められる。 第1 事案の概要:被告人が業務上過失致死傷罪に問われた事案において、第一審判決では昭和43年法律61号による改正前の刑法211条前段が適用された。弁護人は、供…
事件番号: 昭和27(あ)5410 / 裁判年月日: 昭和29年3月16日 / 結論: 棄却
証人Aの供述につき所論のように弁護人の異議申立により排除決定があつたのは、Bからの伝聞事項に関する部分のみであること原判決の説示するとおりである。そして第一審判決が証拠に引用したのは、前記証人の直接見分した事実に関する供述部分であると原審は認めたのであつて、その判断に誤りはない。