判旨
裁判所が訴訟手続上の異議申立てを却下した決定に対し、前提となる実体法上の論点について直接の判断が示されていない場合、判例違反を理由とする抗告は認められない。
問題の所在(論点)
訴訟手続の適法性に関する異議却下決定に対し、公訴提起の有効条件(告発の有無)という実体的な前提論点について、原決定が判例と相反する判断を示したといえるか。
規範
刑事訴訟法に基づく異議申立てに対する却下決定について、上級審への不服申立てが判例違反を理由とする場合、原決定が実際にその判例と相反する判断を示していることを要する。裁判所が判断を留保したまま手続を進行させたに過ぎない場合は、判例違反の前提を欠く。
重要事実
法人税法違反等の被告事件において、弁護人が「収税官吏の告発がないため公訴提起が違法無効である」と主張し、公訴棄却を求めた。裁判長はこの判断を留保したまま検察官申請の証人を採用した。これに対し弁護人は、無効な公訴に基づく手続進行は違法であるとして刑事訴訟法309条に基づき異議を申し立てたが、裁判所は「理由なし」として棄却した。抗告人は、この決定が告発を要件とする判例に違反すると主張して抗告した。
あてはめ
原決定は、収税官吏の告発が本件公訴提起の条件であるか否かについて、具体的な実体判断を下していない。裁判所は単に弁護人の申立てに対する判断を留保した状態で証人採用等の手続を進めたに過ぎない。したがって、原決定が所論の引用判例(告発を必要とする旨の判決)と相反する判断を示したという事実は認められない。
結論
本件抗告には理由がないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
手続的な異議却下決定に対する不服申立てにおいて、その前提となる法律問題(本件では告発の要否)について原審が明示的な判断を避けている場合、判例違反の主張は成立しないことを示している。実務上は、中間的な手続決定に対して実体論をぶつける際の限界を示す事例といえる。
事件番号: 昭和24新(つ)11 / 裁判年月日: 昭和25年3月27日 / 結論: 棄却
辯護人が「訴訟の途中に於て本件公訴の提起が合憲性を有するや否やに付重大なる疑問を生じた」からといつて公訴棄却の申立をしても裁判所が事案を審理するに當り、これに關する辯護人の申立を却下するに際し、公訴提起の憲法適否につき理由を示さなければならぬことは憲法上も訴訟法上も要請されてはないのである。
事件番号: 昭和25(し)61 / 裁判年月日: 昭和25年12月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の理由として憲法違反を主張していても、その実質が原決定の訴訟手続に関する単なる法令違反にすぎない場合には、刑罰訴訟法上の適法な特別抗告の理由とは認められない。 第1 事案の概要:特別抗告人が、原決定の訴訟手続に関する不服を憲法違反と主張して特別抗告を申し立てた事案。なお、具体的な事案の詳細…
事件番号: 昭和43(し)105 / 裁判年月日: 昭和43年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠調請求却下決定に対する異議申立棄却決定のような、訴訟手続に関し判決前にされた決定は、刑事訴訟法433条1項に規定する特別抗告の対象となる「この法律により不服を申し立てることができない決定」には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、裁判所が行った証拠調請求却下決定に対し、異議の申し立てを行っ…
事件番号: 昭和35(し)3 / 裁判年月日: 昭和35年2月23日 / 結論: 棄却
検察官から証拠調の請求がなされた録音テープ一巻は、いわゆる盗聴による違法証拠で証拠能力がない旨の弁護人の意義申立を棄却し、これを取り調べる旨の決定は、公訴手続に関し判決前にした決定であつて、刑訴第四三三条第一項にいわゆる「この法律により不服を申し立てることができない決定」にあたらない。
事件番号: 昭和25(し)17 / 裁判年月日: 昭和28年1月22日 / 結論: 棄却
起訴状の謄本が所定期間内に送達されなかつたとして検察官がさらに控訴を提起した場合に、弁護人から同一裁判所に二重の起訴があつたものとして控訴棄却の申立があつたとしても、裁判所は、最終の判決自体においてその判断を示せばたり、その都度申立に対し決定することを要しない。