起訴状の謄本が所定期間内に送達されなかつたとして検察官がさらに控訴を提起した場合に、弁護人から同一裁判所に二重の起訴があつたものとして控訴棄却の申立があつたとしても、裁判所は、最終の判決自体においてその判断を示せばたり、その都度申立に対し決定することを要しない。
同一裁判所に二重の起訴があつたものとして控訴棄却申立があつた場合における判断の時期と方法
刑訴法338条3号,刑訴法271条
判旨
弁護人が提出した公訴棄却を求める上申書の取調べを却下する決定は、公訴棄却の申立てに対する裁判そのものではなく、不服申立ての対象となる原決定が存在しないため、特別抗告は不適法である。
問題の所在(論点)
公訴棄却を求める上申書の取調べを却下する決定が、刑事訴訟法上の不服申立て(特別抗告)の対象となる「裁判」に該当するか。
規範
公訴棄却の可否は、原則として最終の判決において判断すべき事項であり、公訴棄却を求める上申書に対する却下決定は、上申事項の調査判断を差し当たり行わない旨の表明に過ぎず、独立した不服申立ての対象となる裁判には当たらない。
重要事実
被告人に対する私文書偽造・行使・詐欺事件の公判において、弁護人が公訴棄却を上申する旨の上申書の取調べを求めた。これに対し、裁判官は当該上申書を不必要と認めて却下する旨の決定を言い渡した。この決定に対し、不服があるとして特別抗告が申し立てられた。
事件番号: 昭和44(し)19 / 裁判年月日: 昭和44年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人等による公訴棄却の申立ては、裁判所の職権発動を促すものにすぎず、これに対する却下決定は刑事訴訟法433条1項の特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:被告人側(あるいは抗告人)が、公訴棄却を求める申立てを行った。これに対し、裁判所が当該申立てを却下する旨の決定を下したため、申立人はこ…
あてはめ
裁判所がなした「上申書を不必要として却下する」との決定は、あくまでその時点において上申事項の調査判断を行わないことを示したものに留まる。これは本件公訴を有効と判断して公訴棄却の申立てを実質的に却下したものではない。公訴棄却の要否は最終的な判決の中で判断されれば足りる事項であり、本件却下決定は独立した不服申立てを許容する性質の決定とは解されない。
結論
本件には不服申立ての対象となる原決定が存在しないため、特別抗告は不適法として棄却される。
実務上の射程
公判手続中における裁判所の訴訟指揮や証拠決定に対し、実質的に公訴の有効性を争う趣旨であっても、判決前の付随的な決定に過ぎないものについては独立した不服申立てを認めないという実務上の取扱いを確認するものである。
事件番号: 昭和41(し)43 / 裁判年月日: 昭和41年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公訴棄却を求める申立ては裁判所の職権発動を促すものにすぎず、却下決定に対しては終局裁判に対する上訴によって不服を申し立てるべきであるから、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:申立人が、裁判所に対し公訴棄却を求める申立てを行ったところ、裁判所がこれを却下する旨の決定をした。これに対し、申…
事件番号: 昭和24新(つ)11 / 裁判年月日: 昭和25年3月27日 / 結論: 棄却
辯護人が「訴訟の途中に於て本件公訴の提起が合憲性を有するや否やに付重大なる疑問を生じた」からといつて公訴棄却の申立をしても裁判所が事案を審理するに當り、これに關する辯護人の申立を却下するに際し、公訴提起の憲法適否につき理由を示さなければならぬことは憲法上も訴訟法上も要請されてはないのである。
事件番号: 昭和57(し)26 / 裁判年月日: 昭和57年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する特別抗告(刑訴法433条)は、対象となる決定又は命令に対し、法上他に不服を申し立てることができない場合に限り許容される。 第1 事案の概要:申立人は、原決定に対し、刑訴法419条および421条に基づき、高等裁判所に対して通常の抗告をすることが可能な状況にあった。しかし、申立人は通…
事件番号: 昭和46(し)98 / 裁判年月日: 昭和46年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にした決定は、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には当たらない。そのため、証拠提出命令申立却下決定に対する異議申立棄却決定について、同条に基づく特別抗告をすることはできない。 第1 事案の概要:申立人が、証拠の提出命令を申し立てたと…