しかし本件被告事件の記録に徴すれば、請求人申出の証人の中A並びに当時捜査を担当していた府中町警察署勤務警部補Bは、控訴審たる東京高等裁判所において証人として尋問されているのであり、不在証明を立証しようとするCについては、同人と被告人Dとの交渉関係につき司法警察官作成の聴取書が存し公判廷においてその証明調がなされているものであるから、右各証人はいずれも新に発見した証拠ということはできないのみならず、請求人申出の証人等はいずれも所論の犯罪事実につき無罪を言い渡すべき明確なる証拠と認めるに足りない。されば本件再審請求は旧刑訴四八五条六号の事由として、その理由なきものである。
旧刑訴第四八五条第六号にあたらない再審請求の一事例
旧刑訴法485条6号
判旨
再審請求において「新証拠」に該当するためには、過去の公判廷で証拠調べがなされていないなどの「新規性」が必要である。また、その証拠が有罪判決を覆し無罪を言い渡すべき「明白性」を備えていない場合は、再審の理由は認められない。
問題の所在(論点)
確定判決後の再審請求において、既に公判廷で証拠調べがなされた者や書面、あるいはこれらと同内容の立証を目的とする証拠が、旧刑訴法485条6号(現行刑訴法435条6号)の「新たに発見された証拠」にあたるか、および「明白性」の要件をいかに判断すべきか。
規範
旧刑訴法485条6号(現行刑訴法435条6号)にいう「証拠を新たに発見したとき」とは、判決当時の裁判所に提出されておらず、証拠調べがなされていない証拠を指す(新規性)。また、その証拠が単独で、あるいは他の証拠と総合して、確定判決の事実認定を覆し、無罪を言い渡すべき「明確なる証拠」であることを要する(明白性)。
重要事実
被告人Dは強盗傷人・強盗致死の罪で有罪判決を受けたが、これに対し再審を請求した。請求人は、不在証明(アリバイ)を立証するためにA、C夫妻、および取調べ担当官の尋問を求めた。しかし、Aおよび取調べ官Bは控訴審において既に証人として尋問されており、Cについても被告人との関係を記した司法警察官作成の聴取書が公判廷で証拠調べ済みであった。
事件番号: 昭和26(き)2 / 裁判年月日: 昭和26年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有罪判決の証拠となった証言が虚偽であることは、その虚偽が確定判決により証明された場合に限り再審理由(刑訴法435条2号)となる。また、前審における審理不尽の主張は、適法な再審請求の理由には当たらない。 第1 事案の概要:強盗傷人の罪で有罪判決を受け、上告棄却により刑が確定した被告人が再審を請求した…
あてはめ
本件で請求人が申し出た証人のうち、AおよびBは東京高裁の控訴審ですでに尋問が実施されている。また、Cについては、Dとの交渉関係に関する聴取書が公判廷で証拠調べされている。したがって、これらの証拠はいずれも「新たに発見した証拠」とはいえない。さらに、仮にこれらの証人等の供述を考慮したとしても、本件の犯罪事実について無罪を言い渡すべき「明確なる証拠」とは認められない。
結論
本件再審請求には、旧刑訴法485条6号所定の理由がないため、棄却される。
実務上の射程
再審請求における新規性と明白性の要件を厳格に解釈した事例。特に、過去の公判で既に取り調べられた証拠と実質的に同一の証拠は、新規性を欠くため再審事由にならないという実務上の基礎的な判断枠組みを示している。
事件番号: 昭和25(き)3 / 裁判年月日: 昭和25年12月19日 / 結論: 棄却
原判決の謄本を添付しない再審の請求は、法律上の方式に違反する。
事件番号: 昭和28(き)23 / 裁判年月日: 昭和28年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法上、確定判決に対する再審の請求は認められているが、確定決定に対する再審を許容する規定は存在しないため、確定決定に対する再審請求は不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、確定した決定(具体的な事案の内容は判決文からは不明)に対し、「再審願」と題する書面を提出して再審を請求した。 第2 …
事件番号: 昭和56(し)45 / 裁判年月日: 昭和60年5月27日 / 結論: 棄却
所論引用の各新証拠(判文参照)は、それ自体においても、また、旧証拠と総合評価しても、申立人に無罪を言い渡すべき明らかな証拠とはいえない。
事件番号: 昭和28(し)45 / 裁判年月日: 昭和28年7月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求の棄却決定に対する即時抗告において、原決定が単に再審事由の不在を判断したに留まり憲法上の判断を示していない場合、当該抗告は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:抗告人は再審請求を行ったが、原裁判所は、主張された請求理由が旧刑訴法485条各号(再審事由)のいずれにも該当しないとしてこれ…