原審は所論の略図そのものを事実認定の資料としたものではなく、被告人が警察署における取調に際し詳細に窃盗の事実を述べた上、犯行当時における被告人及び第一審相被告人Aの位置などを明確にするため所論の略図を書いたという事実を証人Bの証言によつて、認定し、この事実を考慮に入れて他の証拠と相俟つて被告人がAと共謀の条第一審判決判示第二の窃盗を敢行したものたることを推断したに外ならないのである。
被告人が警察署において犯行に関する略図を書いた事実を証言によつて認定し、この事実と他の証拠と相俟つて同被告人の犯行を認定したことの適否
刑訴法317条,刑訴法323条3号
判旨
警察署での不当な取調べを示唆する公判供述があっても、検察事務官面前での供述調書が当然に任意性を欠くとはいえず、また被告人が作成した犯行状況の略図等が存在する事実は事実認定の資料とし得る。
問題の所在(論点)
1. 先行する警察段階での暴力等の疑いがある場合、その後の検察官等に対する供述の任意性が当然に否定されるか。 2. 供述内容を具体化するために作成された略図等の存在事実を、事実認定の資料(間接事実)として用いることは許されるか。
規範
1. 憲法38条2項及び刑訴法319条1項に基づく自白の任意性判断において、先行する警察段階での不当な取調べ(殴打等)があったとしても、そのことのみから直ちに、後の検察事務官の面前における供述までが強制又は拷問による供述であると即断することはできない。 2. 取調べに際して被告人が作成した略図そのものを証拠とするのではなく、被告人が犯行事実を詳細に述べた上でかかる略図を作成したという「事実」自体は、他の証拠と相まって犯行を推断するための間接事実として許容される。
重要事実
被告人は窃盗罪で起訴された。第一審は、相被告人Aの検察事務官に対する供述調書を被告人の事実認定の資料とした。Aは公判において「警察の取調べ時に巡査に殴打され、カットとなって自白した」と供述したが、検察事務官面前での供述が強制等によることを示す他の証拠はなかった。また、原審は被告人が警察での取調べにおいて詳細に窃盗事実を述べた際、被告人らの位置等を示す略図を書いたという事実(証人Bの証言による)を、他の証拠と併せて共謀の推断に用いた。
あてはめ
1. Aの警察での被殴打の主張は本人の公判供述以外に裏付けがなく、裁判所もこれを措信していない。仮に警察で不適切な取調べがあったとしても、検察事務官面前での供述が強制等によるものと直ちに断定することはできず、任意性は否定されない。 2. 原審は、被告人が作成した「略図そのもの」を証拠としたのではなく、取調べにおいて詳細な供述を行い、その一環として略図を作成したという「経過・事実」を証言から認定したに過ぎない。この事実は他の証拠と相まって被告人の共謀を推断させる資料として有効である。
結論
本件各証拠の採用及び事実認定の手順に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の任意性の遮断(毒樹の果実的論理)を限定的に捉える際の論拠として利用できる。また、非供述証拠化(図面の作成事実を状況証拠とする手法)の適法性を示唆しており、伝聞例外や自白の補強証拠の議論において、供述内容そのものではなく「作成した事実」の証拠価値に触れる際の参考となる。
事件番号: 昭和26(あ)701 / 裁判年月日: 昭和27年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人自らの供述を記載した書面であっても、その内容が被告人の自白を補強する証拠として認められる場合には、補強証拠としての適格性を有する。 第1 事案の概要:被告人が起訴事実について自白を行っていた事案において、第一審判決は被告人の供述書を証拠として採用した。弁護人は、当該供述書が被告人自身の供述に…