判旨
憲法違反を主張する上告であっても、その実質が原判決の事実認定に関する経験則違反の非難にすぎない場合は、刑事訴訟法405条所定の上告理由にあたらない。
問題の所在(論点)
憲法違反を名目として、原審の事実認定の不当性を争う主張が、刑事訴訟法405条の上告理由(憲法違反)に該当するか。
規範
憲法31条、37条1項、38条3項等の憲法違反を上告理由とする場合であっても、その実質が原審の事実認定や経験則の適用に対する不服申し立てにすぎないときは、刑事訴訟法405条の定める適法な上告理由とは認められない。
重要事実
被告人の弁護人は、原判決が犯罪届書の作成・届出日時について判断した内容が経験則に違反しており、ひいては憲法31条(適正手続)、37条1項(公平な裁判所の迅速な公開裁判)、38条3項(自白のみによる有罪禁止)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
所論の憲法違反の主張は、その実質において、犯罪届書の作成届出日時に関する原審の判断が経験則に違反すると非難するものにすぎない。これは単に名を憲法違反に借りているだけであり、具体的な憲法条項の解釈誤りや適用誤りを指摘するものではなく、実質的には事実認定の不当を訴えるものであると評価される。したがって、適法な上告理由としての実質を欠く。
結論
本件上告は刑事訴訟法405条の上告理由にあたらず、また同法411条を適用して職権で判決を破棄すべきものとも認められないため、棄却される。
実務上の射程
司法試験等の答案作成においては、単なる事実誤認や経験則違反の主張を憲法違反に「擬装」しても、上告理由として不適法とされる際の論拠として使用できる。事実認定の適否は原則として上告審の審査対象外であるという上告審の構造を示す判例である。
事件番号: 昭和25(あ)1883 / 裁判年月日: 昭和25年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が単なる事実誤認の主張にすぎない場合、刑訴法405条の上告理由に該当せず、職権破棄の必要性も認められないときは、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件について上告を申し立てた事案。上告人は弁護人を通じて上告趣意書を提出したが、その内容は原判決の認定した事実関係を争う、…