原審の裁量權の範圍内の量刑を過重なりとする理由だけでは原判決を憲法第一三條に違反するものとはいえない。
量刑不當の主張と憲法第一三條
憲法13條
判旨
事実審の裁量権の範囲内にある量刑を不当に過重であると主張するだけでは、憲法13条違反の適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
事実審が裁量権の範囲内で決定した量刑が、被告人の罪責に対して不当に過重であると主張する場合、それが直ちに憲法13条違反の上告理由(刑訴法405条1号)となるか。
規範
量刑の決定は事実審の広範な裁量権に属する事項である。したがって、被告人の罪責に対して科刑が不当に過重であるという主張のみでは、直ちに憲法13条が保障する個人の尊厳や幸福追求権等に違反するものとは認められない。
重要事実
被告人は酒の密造に関与したが、密造に使用していない道具まで押収されたことで、裁判所が犯行を計画的なものと誤認し、過重な刑を科したと主張した。弁護人は、密造の動機、設備の規模、押収された原料・器具の数量、利得の多寡等の情状が十分に考慮されておらず、原審が第一審の量刑を不当ではないとして控訴を棄却したことは被告人の罪責以上の不当な科刑であり、憲法13条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人および弁護人が主張する事由は、密造の態様や証拠の評価、情状の不十分な考慮といった事実誤認や量刑不当の主張に留まるものである。これらは事実審である原審の裁量権の範囲内に属する事柄であり、憲法が保障する基本的人権を直接侵害するような憲法違反の問題を含んでいるとは認められない。したがって、単なる量刑不当の主張は、憲法違反を理由とする適法な上告理由にはあたらない。
結論
事実審の裁量内にある量刑の不当を訴えるだけでは憲法13条違反とはいえず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
量刑不当を憲法違反にこじつけて上告しても、裁量権の範囲内である限り門前払いされることを示した。答案上は、憲法違反を上告理由とする際の「憲法違反」の意義が、単なる裁判結果への不満(実質は量刑不当)を含まないことを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和25(あ)870 / 裁判年月日: 昭和26年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審の証拠の取捨判断に対する不服を憲法違反と称して主張することや、量刑不当を主張することは、いずれも適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側が、原審の証拠取捨選択および量刑の不当を不服として上告した。その際、上告趣旨の第一点として憲法違反の語を用いて原審の判断を攻撃し、第二点と…