原判決は、その認定事実によれば被告人Aの収受した賄賂の価額は総計一万四千三百七十五円となるにも拘らず、同被告人に対し金一万四千五百七十五円の追徴を命じている。これは原審の誤算にもとずくものであること明白であり、もとより失当たるを免れ得ないところではあるが、かかる軽微な誤算があるとしても(執行に際し適当に措置し得ない訳ではないのであるから)いまだそれにより原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
判決における追徴金の誤算と刑訴第四一一条
刑法197条ノ4,刑訴法411条
判旨
判決に追徴額の算定誤りという失当があっても、それが軽微な誤算であり執行の際等に措置し得るものであれば、直ちに判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。
問題の所在(論点)
判決における追徴額の算定に誤りがある場合、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべきか。
規範
上告審において原判決に事実の誤認又は法令の適用の不備(計算違い等)がある場合であっても、その誤りが軽微であり、判決を維持しても「著しく正義に反する」(刑訴法411条各号)と認められない限り、原判決を破棄すべき理由とはならない。
重要事実
被告人Aの収賄事件において、原判決は認定事実から算出される賄賂の価額の合計(14,375円)と異なる金額(14,575円)を追徴額として被告人に命じた。この差額200円は計算上の単純な誤算によるものであった。
あてはめ
本件における追徴額の算定誤りは、原審の明白な誤算に基づくものであり失当ではある。しかし、その誤りは「軽微」なものである。また、このような誤算は執行に際して適当に措置することが可能である。したがって、この程度の瑕疵があるとしても、原判決を破棄しなければ「著しく正義に反する」状況には当たらないと解される。
結論
追徴額の軽微な計算誤りは、直ちに判決の破棄事由とはならず、上告は棄却される。
実務上の射程
計算ミス等の形式的な瑕疵が直ちに破棄事由(刑訴法411条)となるわけではないことを示す。実務上、結論に影響しない瑣末な認定の誤りを主張する際、正義に反するか否かの閾値を論じる際の参考となる。
事件番号: 昭和41(あ)571 / 裁判年月日: 昭和41年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】追徴額の計算に数円程度の極めて軽微な誤差があったとしても、それが受饗応の見積り額である場合には、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。 第1 事案の概要:被告人が賄賂として饗応を受けた事案において、受饗応額の計算に1人あたり3円または4円の差異が生じていた。弁護人はこの計算…