判旨
追徴額の計算に数円程度の極めて軽微な誤差があったとしても、それが受饗応の見積り額である場合には、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
問題の所在(論点)
追徴額の算定において、極めて少額の計算違いがある場合に、判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる事由(刑事訴訟法411条各号参照)に該当するか。
規範
上告理由に当たらない事実誤認や法令違反の主張であっても、刑事訴訟法411条等の職権破棄事由の存否が検討されるが、計算違いに基づく追徴額の不当が「著しく正義に反する」と言えるためには、その差額の程度や算出の性質を総合考慮して判断すべきである。
重要事実
被告人が賄賂として饗応を受けた事案において、受饗応額の計算に1人あたり3円または4円の差異が生じていた。弁護人はこの計算違いを理由に追徴額が不当であると主張して上告した。
あてはめ
本件における受饗応額の差額は、1人あたり3円または4円という極めて軽微なものである。また、当該金額は確定的な実数ではなく受饗応の「見積り額」としての性質を有するものである。したがって、仮に計算違いが存在したとしても、その程度の軽微さに鑑みれば、判決を維持することが正義に反する状態とはいえない。
結論
本件の計算違いは極めて軽微であり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められないため、上告は棄却される。
実務上の射程
追徴や没収の対象額における微細な計算誤りを理由とした職権破棄の可否を論じる際の限界事例として活用できる。特に「見積り」による算定が許容される場面において、軽微な誤差が判決の妥当性に影響しないことを示す論拠となる。
事件番号: 昭和25(あ)3442 / 裁判年月日: 昭和26年12月6日 / 結論: 棄却
原判決は、その認定事実によれば被告人Aの収受した賄賂の価額は総計一万四千三百七十五円となるにも拘らず、同被告人に対し金一万四千五百七十五円の追徴を命じている。これは原審の誤算にもとずくものであること明白であり、もとより失当たるを免れ得ないところではあるが、かかる軽微な誤算があるとしても(執行に際し適当に措置し得ない訳で…