被告人が、甲から、八〇〇円の供与および二四〇〇円の交付を受けたとする本位的訴因と、被告人が、甲と共謀のうえ、右三二〇〇円のうちから、乙ら七名に対し、ひとりあたり四〇〇円、合計二八〇〇円相当の饗応接待をしたとする予備的誘因との間には、公訴事実の同一性がある。
公訴事実の同一性があるとされた事例
刑訴法256条5項,刑訴法312条1項,公職選挙法221条1項
判旨
収賄の被疑事実(本位的訴因)と、第三者への饗応接待という贈賄等の共謀事実(予備的訴因)との間には、公訴事実の同一性が認められる。
問題の所在(論点)
被告人が直接金員を受領したとする収賄事実と、被告人が第三者への饗応接待を共謀したとする事実との間に、公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)が認められるか。
規範
公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)の有無は、両訴因の基本的事実関係が同一であるか、あるいは非両立の関係にあるかによって判断される。具体的には、犯行の日時、場所、方法、対象などの共通性や、社会的実態としての事実の近接性を総合考慮して決すべきである。
重要事実
被告人がAらから合計3200円の供与・交付を受けたとする収賄の本位的訴因に対し、予備的訴因として、被告人がAらと共謀し、右3200円の中からBら7名に対し1人あたり400円(計2800円)の饗応接待をしたとする事実が追加された。両訴因は、同一の金員を原資とする授受または供応に関する事案である。
あてはめ
本件では、本位的訴因の対象である3200円と、予備的訴因における饗応接待の原資となった3200円は同一のものと認められる。被告人が自ら利益を享受したか、あるいは他者への供応を共謀したかという態様の違いはあるものの、一連の金員の移動をめぐる社会的実態として共通性が高い。したがって、両訴因は基本的事実関係において共通すると評価できる。
結論
本位的訴因と予備的訴因との間には公訴事実の同一性が認められ、訴因の変更(予備的訴因の追加)は適法である。
実務上の射程
本決定は、収賄罪と贈賄罪の共謀という法的構成が異なる場合であっても、原因となる金員の同一性や行為の近接性があれば公訴事実の同一性を広く認める実務の傾向を示している。答案上は、両訴因が「単一の社会的事実」の異なる法的評価に過ぎないことを強調する際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和28(あ)3495 / 裁判年月日: 昭和28年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の贈賄行為が同一の犯意に基づくものか否かは事実認定の問題であり、供与を受けた金員の一部を自己に保有しているような事情がある場合、各行為が独立した犯罪を構成すると認定することは適法である。 第1 事案の概要:被告人は、贈賄として供与を受けた金員について、その一部をそのまま自己の懐に保有し続けた。…