第一審判決判示第一の被告人の受供与の所為と判示第二及び第三の供与の所為とは現実にはたまたま手段結果の関係にあつたということができても、一般的に、公職選挙法二二一条一項四号の受供与の所為と同条同項一号の供与の所為とは性質上普通に手段結果の関係に立つものとはいい難いから、右判示第一の所為と第二、第三の所為とは刑法五四条一項後段により一罪となり得るものではない。
公職選挙法第二二一条にいわゆる受供与の罪と供与の罪との関係
刑法54条1項後段,公職選挙法221条1項4号,公職選挙法221条1項1号
判旨
刑法54条1項後段の「牽連犯」における犯罪の手段・結果とは、ある犯罪の性質上、その手段または結果として普通に用いられる関係にあることを要する。公職選挙法上の受供与罪と供与罪は、現実に関係があっても性質上当然に手段結果の関係に立つとはいえず、併合罪となる。
問題の所在(論点)
数個の罪が刑法54条1項後段の「犯罪の手段又は結果であるとき」(牽連犯)にあたるか否かの判断基準、および公職選挙法における受供与罪と供与罪がこれに該当するか。
規範
刑法54条1項後段にいう「犯罪の手段」とは、ある犯罪の性質上、その手段として普通に用いられる行為をいい、「犯罪の結果」とは、ある犯罪より生ずる当然の結果を指す。すなわち、個別の事案において現実的な手段・結果の関係にあるだけでは足りず、抽象的・型的にその関係が認められることを要する。
重要事実
被告人は、Aから現金4万5000円を供与されるにあたり、その情を知りながらこれを受けた(公職選挙法221条1項4号:受供与罪)。また、被告人は別途、他人に対して現金を供与した(同項1号:供与罪)。被告人側は、これらの受供与行為と供与行為が手段と結果の関係にあるとして、牽連犯として処断されるべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件における受供与の所為と供与の所為は、現実にはたまたま手段・結果の関係にあったということができる。しかし、公職選挙法221条1項4号の受供与罪と、同条同項1号の供与罪とは、性質上当然に一方が他方の手段または結果となる関係にあるとは言い難い。したがって、両罪は抽象的・型的に手段・結果の関係にあるとは認められず、牽連犯の要件を充足しない。
結論
被告人の受供与罪と供与罪は牽連犯とはならず、併合罪(刑法45条)として処断される。上告棄却。
実務上の射程
牽連犯の成立範囲を「性質上の関連性」に限定した極めて重要な判例である。答案上では、犯行の動機や目的が共通していても、構成要件の性質上、通常その手段・結果とされる関係にない限りは併合罪として処理する際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和34(あ)2120 / 裁判年月日: 昭和35年4月8日 / 結論: 棄却
被告人が供与を受けた選挙買収金員を以て、その独自の裁量に基いて更に他を買収した場合には、前の受供与罪と後の供与罪との間に吸収の問題を生ずべき余地は存しない。