公職選挙法第二二一条第一項第一号の供与罪が成立するためには供与の申込だけでは足らず供与の申込を受けたものが、その供与の趣旨を認識してこれを受領することを要する。
公職選挙法第二二一条第一項第一号の供与罪の要件
公職選挙法221条1項1号
判旨
公職選挙法221条1項1号の「供与」は、単なる供与者の目的意思のみで決まるものではなく、相手方が供与の趣旨を認識してこれを受領することを要する。
問題の所在(論点)
公職選挙法221条1項1号の「供与」罪が成立するためには、供与者の主観的目的のみで足りるのか。それとも、相手方(受与者)がその趣旨を認識して受領することを要するのか、同号の「供与」と「供与の申込」の区別が問題となる。
規範
公職選挙法221条1項1号にいう「供与」が成立するためには、供与の申込だけでは足りず、その申込を受けた者が供与の趣旨を認識してこれを受領することが必要である。同号が「供与」と「供与の申込」を区別して規定していることから、受与者の認識と受領行為を欠く場合は「供与」には当たらないと解すべきである。
重要事実
被告人は選挙に関し利益の供与を行ったとして公職選挙法違反で起訴された。原審(控訴審)は、供与罪の成立について「供与者の目的意思によって片面的に決まるものであり、受与者の認識に左右されない」と判断し、被告人を「供与」の罪で処断した。しかし、実際の事実関係によれば、受与者が供与の趣旨を認識して受領したかについては疑義があり、むしろ「供与の申込」の事実に止まる可能性があった。
あてはめ
原審は、受与者の認識を問わず供与者の目的のみで「供与」が成立するとしたが、これは同号の解釈を誤ったものである。条文上「供与」と「申込」が並記されている以上、両者は区別されるべきであり、相手方の認識・受領がなければ「供与」の既遂とは評価できない。もっとも、本件の事実関係によれば、被告人に「供与の申込」が成立することは明らかであるため、原審の法令解釈の誤りは判決に影響を及ぼさない(刑訴法411条を適用しない)。
結論
供与罪は受与者の趣旨認識と受領を要するため、原審の解釈は誤りであるが、供与の申込罪の成立が明白であるため、被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
公職選挙法における買収罪の既遂時期を画定する重要な判例である。答案上は、贈賄罪等の対向犯における「供与」概念との対比で論じる際、条文上の「申込」との区別を根拠に、受与者の主観的・客観的関与の必要性を指摘する際に引用すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)4983 / 裁判年月日: 昭和30年6月7日 / 結論: 棄却
職権をもつて記録により原審認定事実を調べてみるに、判示第一の事実は、被告人は判示のような趣旨で金三万五千円の金額を一たん自己に供与を受けたものと認むべきであり、次で被告人はこのうちより金五千百五十二円二十五銭を使用し他の選挙人等を饗応したことは判示第二のとおりである。してみれば原判決が破棄自判の上被告人について事実第一…