判旨
公職選挙法221条1項5号の交付罪は、選挙に関し、買収の目的をもって金銭等を交付することによって成立し、その前提となる約束等の有無を問わない。
問題の所在(論点)
公職選挙法221条1項5号の交付罪の成立要件、および第一審判決が認定した金員交付の事実をもって同罪が成立するか。
規範
公職選挙法221条1項5号にいう金銭等の「交付」とは、選挙に関し、投票を得もしくは得させる目的、または投票をしないようにさせる目的をもって、金銭や物品を授与する行為を指す。同号の罪は、同条1項1号に規定される「供与」が申込みや約束を前提とする場合を含むのに対し、現実の交付行為自体を独立して処罰対象とするものである。
重要事実
被告人が、公職選挙法に基づき行われた選挙において、特定の候補者への投票を勧誘する等の目的をもって、有権者等に対し金銭を交付した。第一審判決は、この交付行為について同法221条1項5号の罪の成立を認め、原判決もこの判断を維持した。被告人側は、事実誤認や法令違反を理由に上告した。
あてはめ
判決文によれば、記録に徴して判示犯罪事実は挙示された証拠により優に肯認できる。原判決が第一審の認定した金員交付について公職選挙法221条1項5号の交付罪の成立を認め、これが第一審判決の破棄理由にならないとした判断は、過去の最高裁決定の趣旨に照らしても正当である。経験則違背や証拠によらない事実認定という違法は存しないと判断される。
結論
本件金員交付行為に公職選挙法221条1項5号の交付罪を適用した原判決の判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
選挙買収における「交付罪」の成立を簡潔に認めた事例である。答案上は、供与(1号)と交付(5号)が並立する場合において、現実の授受が認められる限り5号の成立を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)1615 / 裁判年月日: 昭和30年11月8日 / 結論: 棄却
刑訴第三九二条は憲法第一三条、第七六条第三項に違反しない。