控訴審が公開の公判廷で事実の取調を行つた上第一審判決の事実誤認を認めて破棄自判した場合においては、たとえその認定した訴因が第一審判決の認定した訴因と異り(但し訴因変更手続は適法になされている)、かつ控訴審判決の挙示する証拠が第一審における証拠のみであるときでも、これを目して憲法の保障する公開裁判の原則に反するとの主張はその前提を欠くものである。
公開裁判の原則に反する旨の違憲の主張が前提を欠く一事例
憲法37条1項,憲法82条1項,刑訴法393条,刑訴法400条
判旨
公職選挙法221条1項1号の供与罪において、当初から一定額の供与を約束せず、犯意を新たにして別個の機会に金員を交付した場合は、それぞれ独立した併合罪を構成する。また、量刑判断にあたっては、供与された資金の主たる用途が政治団体の運動費用であることや、被告人の認識が未必的殺意にとどまること等の情状を考慮すべきである。
問題の所在(論点)
数回にわたり選挙運動に関する金員を供与した場合の罪数関係、および供与資金の性格や主観的態様が量刑に及ぼす影響が問題となる。
規範
公職選挙法違反の罪において、数回にわたる金員の供与がなされた場合、当初から総額の供与に関する合意や了解が存在せず、各交付のたびに犯意を新たにしてなされたものであるときは、それらの行為は個別の罪を構成し、刑法45条前段の併合罪として扱われる。
重要事実
被告人Aは、衆議院議員総選挙に関し、被告人Bに対し投票取りまとめ等の報酬として2回にわたり現金を供与した。1回目は30万円、2回目は20万円であったが、これらは最初から50万円を渡す約束があったわけではなく、1回目の後に改めて犯意を生じて2回目が行われた。なお、当該資金は政治団体の運動費用に充てる主旨で支出され、その処分はBに一任されていた。Aの認識は未必的な犯意にとどまるものであった。
あてはめ
本件では、被告人Aが被告人Bに対し、はじめに30万円を渡し、その後さらに犯意を新たにして20万円を渡したという事実が認められる。これは最初から50万円を分割して交付する合意があったものとはいえず、各行為が独立した犯意に基づくものであるため、併合罪(刑法45条)の関係に立つ。もっとも、量刑上は、資金が特定政治団体の運動費用に充てる目的で支出され、Bの一存で一部が家計費等に流用されたこと、Aの犯意が未必的であったことを考慮し、原判決の量刑は不当として破棄を免れない。
結論
被告人Aの所為は、各回ごとに公職選挙法221条1項1号の罪を構成し、併合罪として加重した刑期(懲役8月、執行猶予2年)に処するのが相当である。
実務上の射程
選挙犯罪における罪数判断において、一連の供与が「単一の犯意」に基づく包括一罪か「別個の犯意」に基づく併合罪かを判断する際の基準(事前約束の有無等)を示しており、起訴状や判決における事実摘示の在り方に資する。
事件番号: 昭和29(あ)4095 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙運動者に対し、過去の選挙運動および将来の継続的な選挙運動に対する報酬として、その処分を一任して金員を供与する行為は、公職選挙法上の買収罪(報酬供与)を構成する。 第1 事案の概要:被告人Aは、被告人Bが過去に選挙運動に従事したこと、および今後も引き続き選挙運動に従事することに対する報酬という意…