判旨
収賄罪の成立において、贈賄者の供述のみを根拠に有罪を認定したのではなく、被告人の供述や複数の証言、その他諸般の事情から推認された事実に依拠する場合、証拠裁判主義に反しない。特に賄賂の主観的認識については、間接事実を総合して認定することが許容される。
問題の所在(論点)
収賄罪において、贈賄者の供述のみを唯一の根拠として有罪を認定することは許されるか。また、賄賂であることの知情(主観的要件)を、諸般の事情から推認することは許されるか。
規範
事実の認定は証拠によらなければならないが、特定の直接証拠(贈賄者の供述等)だけでなく、被告人の供述、他の証人の供述、およびそれらから導かれる諸般の事情を総合して犯罪事実を認定することは、証拠裁判主義の原則に合致する。特に主観的態様については、客観的事実からの推認による認定が可能である。
重要事実
被告人が収賄の罪で起訴された事案。第一審は、被告人の公判供述(金員貸与の趣旨を否認する部分を除く)、司法警察員に対する供述調書、および証人A(贈賄者)・Bの各供述を総合して収賄事実を認定した。被告人側は、贈賄者であるAの供述のみを証拠として有罪を認定したことは違憲であると主張して上告した。
あてはめ
第一審は贈賄者Aの供述のみに依拠したわけではなく、被告人自身の供述や証人Bの供述を総合検討している。また、被告人が否認していた「賄賂であることの認識」という主観的要素についても、単一の供述からではなく、記録上の各証拠によって認められる「諸般の事情」から合理的に推認している。したがって、証拠に基づかない認定があったとはいえない。
結論
贈賄者の供述だけでなく、被告人の供述や間接事実を総合して収賄事実を認定した判決は適法である。上告棄却。
実務上の射程
収賄罪の立証において、贈賄者の供述という直接証拠の信用性を補強する目的や、主観的認識を認定する手法として、周辺事情を総合して「推認」する手法の正当性を確認した判例である。答案上は、供述証拠の信用性判断や、主観的要件の認定における総合評価の必要性を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)748 / 裁判年月日: 昭和26年3月6日 / 結論: 棄却
憲法第三八条三項の定める自白を唯一の証拠とすることの禁止は、もともと犯罪事実の認定に関するものであることは、当裁判所大法廷の判例の趣旨に徴して、おのづから明らかである(昭和二三年(れ)第一六八号同年七月二九日大法廷判決)。しかるに、被告人がAから取受した所論金二千円を費消したという事実は、もとより被告人の収賄罪を構成す…