一 一件記録を精査すれば、所論証人A、同Bについて第一審裁判所は、旧刑訴二〇一条一項三号後段に基きその尋問当時現に供述を為すべき事件の被告人と共犯の嫌疑ある者と認め、宣誓を為さしめないで尋問し、原審裁判所は、第一審裁判所の尋問当時はその嫌疑があつたが自己の尋問当時には最早かかる嫌疑なきものと認め、宣誓を為さしめて尋問したものであると認められる。されば、原審裁判所が第一審裁判所がその尋問同時共犯の嫌疑ありと認め宣誓を為さしめないで尋問した所論証人尋問の措置を正当と認めその証言を有効として採用したからといつて所論判例に反する判断をしたものとはいえない。 二 刑訴施行法第三条の二は憲法に反する無効の規定であるというだけであつて、何等原判決に対する不服の理由を示していない主張は、適法な上告理由と認められない。
一 第一審当時において旧刑訴第二〇一条第一項第三号後段に該当した証人が第二審当時之に該当しなかつた場合の第一審公判調書中の証言の証拠能力 二 憲法違反の主張と認められない事例
旧刑訴法337条,旧刑訴法201条1項,旧刑訴法196条,刑訴施行法3条の2,刑訴法405条
判旨
証人が共犯の嫌疑を有するか否かの判断は、尋問当時の状況に基づき裁判所が行うべきものであり、第一審で共犯の嫌疑があると認め宣誓なしに行われた証言は、後の審級で嫌疑が消滅したとしても、その有効性に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
証人尋問において共犯の嫌疑の有無を判断すべき基準時はいつか。また、第一審で嫌疑ありとされ宣誓なしに行われた証言の効力は、後の審級で嫌疑が解消された場合に否定されるか。
規範
証人が被告人の共犯として嫌疑を有するか否かの判断、およびそれに伴う宣誓の要否(旧刑訴法201条1項3号後段)は、証人尋問が行われる「その当時」の客観的状況に基づき裁判所が判断すべきものである。したがって、尋問時に共犯の嫌疑があると認められた証人について、宣誓をさせずに得た証言は、その後の事情変更により嫌疑が消滅したとしても、適法な証拠としての効力を失わない。
重要事実
被告人Cらの贈収賄等の事件において、第一審裁判所は、証人AおよびBについて、尋問当時に被告人と共犯の嫌疑がある者と認め、宣誓をさせずに尋問を行った。これに対し、原審(控訴審)裁判所は、自己の尋問当時には最早そのような嫌疑はなくなったものと認め、両名に宣誓をさせて尋問を行った。弁護人は、第一審での宣誓なき証言を有効として採用した原判決には判例違反があるとして上告した。
あてはめ
本件において、第一審裁判所が尋問時に両証人を「共犯の嫌疑ある者」と認定し、宣誓をさせずに尋問した措置は、当時の状況に照らせば正当である。原審において嫌疑が消滅したと判断されたことは、第一審尋問時における嫌疑の存在を否定するものではない。よって、第一審での証人尋問の手続きに違法はなく、その証言を証拠として採用した原判決の判断に誤りはない。
結論
証人尋問当時の嫌疑に基づき宣誓なしに行われた証言は有効であり、原判決の証拠採用に違法はない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法における証人の宣誓免除事由の判断基準時を「尋問当時」と明示した。実務上、審級によって証人の立場(共犯嫌疑の有無)が変化した場合でも、前審における適法な証拠調べの手続きや証言の証拠能力が遡及的に否定されることはないことを確認する際に用いる。
事件番号: 昭和26(あ)1657 / 裁判年月日: 昭和28年2月12日 / 結論: 棄却
公判廷外における被告人の自白の任意性の有無の調査は、必ずしも証人の取調によるの要なく、裁判所が適当と認める方法によつてこれを行うことができる。