旧刑訴第二〇一条第一項第三号及び第一八八条第二項にいう「共犯」とは、刑法第六〇条以下の定める共犯(狭義の共犯)のみを指すのではなく、収賄及び贈賄の罪のように、法律がそれぞれ別個の罪として規定していても、その性質上たがいに関与、加担の関係がある場合(いわゆる必要的共犯に属する場合)をも含むものと解すべきである。なぜなら、当該事件の被告人と右のような関係にある者を証人として調べる場合、その宣誓及び供述義務の有無について、刑法上の共犯関係にある者と別異の取扱をすべき理由はないからである。
旧刑訴法第二〇一条第一項第三号及び第一八八条第二項にいう「共犯」と必要的共犯
旧刑訴法201条1項3号,旧刑訴法188条2項,刑法197条,刑法198条
判旨
刑事訴訟法上の「共犯」とは、刑法上の共犯のみならず、贈賄罪と収賄罪のような対向犯(必要的共犯)も含まれる。そのため、被告人と対向犯の関係にある者を証人として尋問する場合、宣誓をさせない措置は適法である。
問題の所在(論点)
贈賄罪と収賄罪のような対向犯の関係にある者が、刑事訴訟法上の「共犯」に含まれるか。また、その者に宣誓をさせずに得た証言に証拠能力が認められるか。
規範
刑事訴訟法における「共犯」の概念は、刑法60条以下の狭義の共犯に限定されず、性質上互いに関与・加担の関係にある「必要的共犯(対向犯)」をも含むと解すべきである。証人として尋問する場合、宣誓及び供述義務の有無について、刑法上の共犯と対向犯とで別異に解すべき理由はないためである。
重要事実
被告人が受刑者らから現金5,000円を受領した収賄の事案において、原審は被告人に対する贈賄者である証人Aを尋問した。その際、原審はAが被告人と共犯関係(必要的共犯)にあると認め、当時の刑事訴訟法に基づき宣誓をさせずに証言させた。これに対し弁護側は、贈賄者は「共犯」に当たらないため宣誓を欠く証言は証拠能力がないと主張して上告した。
あてはめ
贈賄者と収賄者は、法律上は別個の罪として規定されているものの、その性質上は相互に関与・加担し合う必要的共犯の関係にある。本件の証人Aは贈賄者であり、被告人の収賄事実と表裏一体の関係にある。このような関係にある者を証人として調べる際、自己の刑事責任に波及する恐れがある点では刑法上の共犯と同様であり、宣誓・供述義務を免除すべき実質的理由がある。したがって、Aを共犯者として扱い宣誓をさせなかった原審の措置は正当である。
結論
贈賄者等の対向犯は刑事訴訟法上の共犯に含まれる。したがって、宣誓をさせずに実施した証人尋問の手続きは適法であり、その証言を証拠として採用することに違法はない。
実務上の射程
証言拒絶権や宣誓免除規定の適用場面において、対向犯を「共犯」に含める実務上の定石を示した判例である。現行法下においても、共犯者の証人適格や宣誓の要否を検討する際の基礎となる。また、弁護人が正当な理由なく不出頭の場合に証人尋問を強行しても弁護権侵害にならないとする判断も含まれており、公判手続の適法性検討に資する。
事件番号: 昭和25(れ)390 / 裁判年月日: 昭和25年9月8日 / 結論: 棄却
原棄公判廷において證人Aを訊問するに當り、原審が同證人に宣誓をなさしめなかつたことは記録上明らかであるが、舊刑訴法第二〇一條第一項第三號は被告人と共犯關係ありとして、有罪の確定判決を受けた者をも包含するものと解すべきであるから(大審院昭和四年(れ)第四二七號同年五月三〇日判決參照)原審が右證人に宣誓を命じなかつたことは…