判旨
控訴趣意書の提出期間経過後に弁護人が選任されたため提出ができなかった場合でも、被告人自身に照会への回答を怠るなどの帰責事由があれば、当該不提出を違法とはいえない。
問題の所在(論点)
被告人が自らの不作為により弁護人選任を遅延させ、その結果として弁護人が控訴趣意書を提出できなかった場合、刑事訴訟法上の手続違法(または被告人の弁護人依頼権・防御権の侵害)が認められるか。
規範
控訴趣意書の不提出が違憲・違法となるかは、被告人の防御権の保障という観点から、弁護人を選任できなかった事情や裁判所の措置の妥当性を総合して判断すべきである。特に、被告人が裁判所からの弁護人選任に関する照会を放置し、自らの怠慢により期間内に弁護人を選任しなかった場合には、弁護人が控訴趣意書を提出できなかったとしても、手続上の違法はないと解する。
重要事実
被告人は、原審において裁判所から早期に弁護人選任の要否に関する照会を受けていた。しかし、被告人はこの回答を怠り、控訴趣意書提出期間が満了する当日になって初めて自ら弁護人を選任しない旨を申し出た。これを受けて裁判所が国選弁護人を選任したが、既に提出期間を経過していたため、選任された弁護人は控訴趣意書を提出することができなかった。
あてはめ
本件では、裁判所は早期に照会を行うという適切な手続を履践している。これに対し、被告人は長期間回答を放置し、期間満了日に至ってようやく選任不要を申し出るという、極めて不誠実な対応をとっている。このような被告人自身の怠慢により弁護人の選任が遅れ、控訴趣意書の提出が不可能となったことは自業自得といえ、裁判所の選任手続に不備はない。したがって、弁護人が趣意書を提出できなかった事実をもって、原審の手続を違法と評価することはできない。
結論
本件上告を棄却する。弁護人が控訴趣意書を提出できなかったとしても、被告人自身の帰責事由に基づくものである以上、適法である。
事件番号: 昭和26(れ)177 / 裁判年月日: 昭和26年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下において、弁護人が主張した上告趣意が単なる量刑不当に帰する場合、それは適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が上告を申し立て、上告趣意書を提出した。しかし、その主張内容は実質的に原判決の量刑が重すぎるという不当性を訴えるものであった。 第2 問題の所在(論点…
実務上の射程
被告人の防御権保障と訴訟経済の調和を示す判例である。答案上は、弁護人の訴訟行為が期間に遅れた場合や欠けた場合において、被告人側の帰責性の有無を認定し、手続の適法性を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)114 / 裁判年月日: 昭和26年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決宣告期日が適法に通知されている場合、弁護人が出頭しないまま判決を宣告しても、弁論を不当に制限したことにはならず適法である。 第1 事案の概要:原審は、弁護人立会いの下に審理を遂げ結審した後、判決宣告期日を指定した。その後、宣告期日を延期したが、延期後の期日についても弁護人に対して適法な通知がな…
事件番号: 昭和26(あ)38 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認や量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない。また、上告提起期間後に提出された弁護人の上告趣意書については、裁判所は判断を下す必要がない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、その趣意は事実誤認および量刑不当を主張するものであった。また、弁護人が提出した上告趣意書は…
事件番号: 昭和26(れ)1735 / 裁判年月日: 昭和27年3月7日 / 結論: 棄却
原審における第二回以後の公判期日が被告人の弁護人静永世策に通知せられなかつたことは所論のとおりである。しかしながら右は所論のように違憲の問題として採り上げるべきではないのみならず、同弁護人は第一回公判期日の呼出を受けながら正当の理由もなく右期日たる昭和二六年二月五日原審の公判に出頭せず、被告人は、別に弁護人安達勝清、藤…
事件番号: 昭和26(れ)1314 / 裁判年月日: 昭和26年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由が刑事訴訟法405条に該当せず、かつ同法411条を適用して判決を破棄すべき事由も見当たらないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てたが、添付された判決文からは被告人が起訴された具体的な罪名や犯罪事実、および弁護人が主張した上告趣意…