判旨
判決書に裁判長の署名がある以上、たとえ押印や契印が欠けていたとしても、裁判長が合議に参与した事実に疑いはなく、その不備は判決に影響を及ぼさない。刑訴法上の適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
判決書に裁判長の署名はあるものの、押印および契印を欠く場合に、裁判長が合議に参与していないとみなされるか。また、その不備が判決に影響を及ぼす訴訟手続の法令違反となるか。
規範
裁判官による判決書の作成において、署名がある限り、押印や契印の欠如は形式的な不備に過ぎず、当該裁判官が合議に参与したという実質を否定するものではない。したがって、判決の効力そのものに影響を及ぼす重大な違法とはならない。
重要事実
被告人らの弁護人が、原判決書に裁判長の押印および契印がないことを理由に、裁判長が合議に参与していない旨の訴訟法違反を主張して上告した。記録上、原判決書には他の裁判官の契印があり、裁判長の署名自体は存在していた。
あてはめ
本件では、原判決書に裁判長の署名がなされている。他の裁判官による契印も存在することから、書面作成のプロセスに裁判長が関与していることは明白である。署名により裁判官の意思が示されている以上、押印や契印がないという形式的事実のみをもって裁判長が合議に参与していないとはいえない。ゆえに、この欠点は判決の結果に影響を及ぼすものではないと解される。
結論
判決書に裁判長の署名がある以上、押印・契印の欠如は判決に影響を及ぼさない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の判決書の形式的要件に関する判断である。実務上、判決書の形式的不備が「判決に影響を及ぼすべき訴訟手続の法令違反」となるか否かの限界を示す例として活用できるが、署名すら欠く場合には、当然に重大な違法となり得る点に注意を要する。
事件番号: 昭和26(れ)1684 / 裁判年月日: 昭和26年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に関与していない裁判官が判決書に署名捺印しているとの主張は、記録上の誤認に基づくものであり、上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人らの弁護人が、公判に関与していない判事が判決に署名していると主張し、憲法違反および刑訴法411条(上告受理の申立て等の特例)に該当する事由があるとして上…
事件番号: 昭和26(あ)4194 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告について、事実誤認や量刑不当の主張は刑訴法405条の上告理由に当たらない。また、違憲の主張についても、先例の趣旨に照らし、憲法違反は認められない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、その主張内容は事実誤認および量刑不当であった。また、弁護人からも憲法違反を理由とする上告がなさ…