判旨
犯罪構成要件に属しない量刑上の事実は証拠による説示を要せず、また、被告人の主張を採用しない理由を判決文で説明することは刑事訴訟法上要求されていない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上、犯罪構成要件に属しない情状事実に証拠説示が必要か。また、被告人の主張を排斥する際にその理由を詳細に説明する義務があるか。
規範
1. 犯罪構成要件に属しない事実(起訴猶予処分の経歴等)については、証拠説示を要しない。 2. 被告人の主張(酩酊による責任能力の否認等)を採用しない場合であっても、その理由を具体的に説明することは刑事訴訟法上義務付けられていない。
重要事実
被告人は犯行当時、酩酊状態で何事も分からなかったと主張したが、一審はこれを採用せず、原審もこれを維持した。また、一審判決は被告人の経歴として起訴猶予処分を受けた事実を摘示したが、これについて証拠の説示はなされていなかった。弁護人は、これらが理由不備や証拠法則違反に当たるとして上告した。
あてはめ
一審が摘示した起訴猶予の経歴は、犯罪事実認定の資料ではなく量刑に関係のある経歴の一端として掲げられたに過ぎない。したがって、構成要件に属しない事実として証拠説示は不要である。また、酩酊の主張については「採用し得ない」と明示されており、その排斥理由の説明は法的に要求されないため、理由不備の違法はない。
結論
被告人の上告を棄却する。構成要件外の事実に証拠説示は不要であり、主張排斥の理由説明義務も存在しない。
実務上の射程
判決書の記載事項(刑訴法335条)に関する射程を示す。罪となるべき事実(構成要件該当事実)以外の情状事実については証拠の摘示が不要であることを明言しており、実務上の判決書作成の簡素化を裏付ける。また、弁解の排斥理由の不記載が直ちに理由不備(400条3号、378条4号等)にならないことを示す指針となる。
事件番号: 昭和27(あ)4583 / 裁判年月日: 昭和28年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審で主張及び判断のなかった訴訟法違反の主張は、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらない。また、適法に証拠調べがなされた証拠書類は証拠能力を有し、職権による判決破棄の事由も認められない。 第1 事案の概要:被告人側は、原審で主張・判断がなされていなかった事項について、訴訟法違反があるとして上告を申…