判旨
控訴審は第一審の事後審としての性格を有し、第一審で証拠とすることができた証拠は当然に控訴審でも証拠とすることができる。したがって、控訴審が第一審の認定事実を判断する際、第一審で採用済みの証拠について改めて取調べの手続を行う必要はない。
問題の所在(論点)
控訴審が第一審判決の事実認定の当否を判断する際、第一審で既に取り調べられた証拠について、改めて刑事訴訟法305条所定の証拠調手続を行う必要があるか。控訴審の構造と証拠能力の承継が問題となる。
規範
控訴審は第一審の事後審たる性格を有する。そのため、刑事訴訟法394条に基づき、第一審において証拠とすることができた証拠は、控訴審においても当然に証拠とすることができる。第一審判決が採用した証拠に基づき事実認定の正当性を判断する場合、控訴審において改めて法305条等の証拠調手続を履践する必要はない。
重要事実
被告人が自白の補強証拠の欠如や、証拠能力のない身許調査書の採用などを理由に控訴したが棄却された。被告人側はさらに、控訴審が第一審の証拠に基づき事実認定を維持するにあたり、改めて証拠調手続(供述録取書等の朗読等)を行わなかった点に違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件において、控訴審(原審)は第一審の認定事実が挙示の証拠により認められると判断した。刑訴法394条により、第一審で証拠能力があったものは控訴審でも保持される。事後審の性格上、控訴審の任務は第一審判決の当否を資料に基づき審査することにあり、既に第一審で適法に取調べが完了している証拠を再読する等の手続は不要である。したがって、原審の手続に違法はない。
結論
控訴審において第一審の証拠を改めて取り調べる必要はなく、原判決の手続に違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(れ)114 / 裁判年月日: 昭和27年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審における有罪判決の証拠説明は、証拠の標目を示すことで足り、詳細な証拠の説示を要しない。旧法事件についても、特例規則により現行法と同様の簡略化された証拠説明が許容される。 第1 事案の概要:被告人A及びBが、犯罪事実を肯定した原判決に対し、証拠説明の不備(訴訟法違反)及び事実誤認を理由として上…
控訴審の事後審的性格を裏付ける重要判例である。答案上は、控訴審における証拠取調べの要否や、第一審の証拠資料を控訴審が当然に利用できる根拠として、刑訴法394条とともに引用する。ただし、控訴審独自の証拠調べ(400条等)を行う場合には別途手続が必要となる点には留意する。
事件番号: 昭和23(れ)1714 / 裁判年月日: 昭和24年4月19日 / 結論: 棄却
第一審の公判前に提出された證據書類及び證據物は第二審においては必ずしも其の證據調をする必要のないことは大審院が繰り返し判例としていた處で、その變更の要を見ない。(大審院大正十四年(れ)第一六一七號同一五年六月十九日言渡判決、同院昭和一〇年(れ)一四六一號同一一年三月五日言渡判決参照)