そこで、第一審の言渡した懲役六月、執行猶予三年間の刑と原審の言渡した禁錮三月の刑とはその何れが重いかの問題を生ずる。実質的には執行猶予のもつ法律的社会的価値判断は実際において高く評価されており又さるべきものである。かくて、本件において第一審の懲役六月が第二審において禁錮三月に変更されているかにかかわらず、前者には執行猶予がつけられていたが後者にはこれがつけられていないのであるから、この具体的な両者の刑の比較の総体的考察において、原審の刑は重くなつていると言わなければならぬ。そうなると、審判決は理由においては、第一審判決な重すぎるから軽くすべきだと言いながら、その結論である主文においては却つてより重き刑を盛つたことになり理由と主文に食違いが存在する。この違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかであり、かつ原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる場合に該当する。
一 懲役六月執行猶予三年の言渡を禁錮三月に改めることと刑の不利益変更 二 理由のくいちがいが著しく正義に反することになる一事例
刑訴法402条,刑訴法411条2号,刑訴法378条4号
判旨
刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ同法411条を適用して職権で原判決を破棄すべき顕著な事由も認められない場合には、上告を棄却すべきである。
問題の所在(論点)
弁護人が主張する上告趣意が刑事訴訟法405条の上告理由に該当するか、あるいは同法411条により職権破棄すべき事由が存在するか。
規範
上告審において、被告人側の主張が刑事訴訟法405条所定の上告理由(憲法違反、判例違反等)に該当せず、かつ、記録を精査しても同法411条に基づき職権で判決を破棄すべき事由(判決に影響を及ぼすべき法令違反、著しい量刑不当、重大な事実誤認等)が認められない場合には、上告を棄却する。
重要事実
被告人側が上告を申し立てた事案であるが、具体的な事案の内容や下級審の判断については判決文からは不明である。弁護人が提出した上告趣意書に基づき、最高裁判所がその内容を検討した。
あてはめ
弁護人が提出した上告趣意を検討したところ、刑事訴訟法405条が規定する憲法違反や判例違反などの正当な上告理由には当たらないと判断された。また、裁判所が訴訟記録を精査したが、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められるような特段の事情(同法411条各号)も見いだせなかった。
結論
本件上告には理由がないため、刑事訴訟法414条、386条1項3号に基づき、上告を棄却する。
実務上の射程
最高裁判所における上告棄却の決定プロセスを示す典型的な形式的判断である。答案上は、上告理由の有無を検討した後の結びの論理として、405条違反の欠如と411条適用の不要性をセットで言及する際の根拠となる。
事件番号: 昭和25(あ)1003 / 裁判年月日: 昭和26年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ同法411条を適用して判決を破棄すべき顕著な事由も認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人が原判決を不服として上告を申し立てた事案。弁護人が提出した上告趣意書の内容に基づき、最高裁判所が上告理由の有無および職権破棄事由の有…