食糧管理法九条に基く命令に違反し同法三一条に該当する犯罪成立後命令の一部変更の結果、所論の大豆が主要食糧から除外されたからといつて既往において成立した犯罪の刑罰を廃止したと解すべき何等の理由も存しない。
食糧管理法に基く命令の改廃と刑の廃止
食糧管理法9条,食糧管理法31条,刑法6条,刑訴法411条5号
判旨
食糧管理法に基づく命令により処罰対象であった事実につき、事後の命令変更で当該事実が対象から除外されても、刑法6条及び刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」には当たらない。
問題の所在(論点)
犯罪後の法令変更により処罰対象から事実が除外された場合、刑訴法405条等に基づき「刑の廃止」があったとして免訴すべきか。
規範
犯罪の成立後に法令の改廃により刑が廃止された場合に当たるといえるためには、単なる事実関係の推移に伴う規制の変更(いわゆる事実上の変更)ではなく、当該行為に対する処罰そのものを不当と認める法律的見解の変更に基づくものでなければならない。
重要事実
被告人らは、食糧管理法9条に基づく命令に違反し、同法31条に該当する犯罪(主要食糧の無許可譲渡等)を犯した。しかし、当該犯罪の成立後、命令の一部変更によって、規制対象であった「大豆」が主要食糧から除外されるに至った。
あてはめ
食糧管理法に基づく命令の変更により大豆が主要食糧から除外されたことは、食糧事情等の社会経済的情勢の変化に対応するための事実上の措置にすぎない。これは既往の犯罪成立時における処罰の正当性を否定する法律的見解の変更とは解されない。したがって、既往の行為に対して成立した犯罪の刑罰権を消滅させる理由はないと判断される。
結論
本件命令の変更は刑の廃止に当たらないため、有罪とした原判決に誤りはなく、上告を棄却すべきである。
実務上の射程
法令変更と限時法の理論(事実上の変更と法律上の変更の区別)に関する重要判例である。司法試験においては、行政刑罰や時限的な規制における「刑の廃止」の成否を論じる際の判断枠組みとして、法律的見解の変更の有無を確認するために用いる。
事件番号: 昭和27(あ)3358 / 裁判年月日: 昭和29年1月16日 / 結論: 棄却
従来主要食糧であつた麦が主要食糧から除外されても、既にその前に成立した主要食糧買受けの罪に対する刑が廃止されたものということはできない。