判旨
行為当時に法令により禁止されていた行為については、その後に法令の改正等により当該禁止が解除されたとしても、別段の定めのない限り、行為当時の違法性及び処罰根拠が消滅するものではない。
問題の所在(論点)
行為後に当該行為を禁止していた法令が改正・廃止され、禁止が解除された場合、刑法6条(法律の変更)により可罰性が消滅するか。事実の変更と法律の変更の区別が問題となる。
規範
犯罪の成否は、行為当時の法令に照らして判断される。事後の法令改正によって当該行為の禁止が将来に向かって解除されたとしても、別段の経過措置等がない限り、過去の行為の可罰性に影響を及ぼさない(いわゆる限時法・事実の変更の論理)。
重要事実
被告人は昭和24年7月28日及び30日に甘薯並澱粉の輸送を行った。当時の法令では当該輸送は禁止されていたが、その後の同年12月1日に農林省令(第115号)が施行され、当該澱粉の輸送禁止が将来に向かって解除された。被告人側は、事後の法令改正により可罰性が消滅した旨を主張して上告した。
あてはめ
本件犯罪当時である昭和24年7月の時点では、判示された甘薯並澱粉の輸送は法令により明確に禁止されていた。同年12月の省令による禁止解除は、あくまで将来に向かってなされたものである。したがって、禁止解除という事実が発生したからといって、それ以前に行われた被告人の行為が犯罪を構成するという法的判断が覆されるものではない。
結論
本件犯罪当時において輸送が禁止されていた以上、その後の法令改正による禁止解除は被告人の罪責に影響せず、有罪を維持した原判決は正当である。
実務上の射程
法令改正が「法律の変更(刑法6条)」にあたるのか、単なる「事実の変更」に過ぎないのかを区別する際のリーディングケースである。特に経済情勢の変動等に基づく規制緩和については、行為当時の違法性を否定しない「事実の変更」として処理する答案構成において、本判例の論理を援用する。
事件番号: 昭和27(あ)3066 / 裁判年月日: 昭和29年1月29日 / 結論: 棄却
論旨後段は本件犯行当時禁止されていた小麦粉の輸送は原審判決後その禁止が撤廃されたから刑訴四一一条二号五号に該当するものとして、原判決を破棄すべきであるというのである。そして小麦粉の輸送禁止は昭和二七年五月三一日農林運搬省令二号により(所論昭和二七年法律一五八号によるとあるは誤りである)撤廃されたので、同日以後の輸送行為…