一 本來併合罪として同時に起訴せられたときは、當然一つの刑の言渡を受け得た數罪を檢察官において時期を異にして一つは舊刑訴法の下において他は新刑訴法の下において各別に起訴したからと言つてその起訴が違法であるという譯のものではない。 二 裁判所においていわゆる舊法事件と新法事件を併合審判し得ないことは既に當裁判所の判例(昭和二四年新(れ)第四〇五號同二五年三月二三日は第一小法廷判決參照)とするところである。されば原審において先きに被告人が舊刑訴法の下において起訴せられた所論窃盜被告事件について確定した刑とは別個に本件被告事件について被告人に對し刑の言渡をしたのは法律上當然のことであつて何等違法ではない。 三 舊刑訴法の下において起訴せられた事件と新刑訴法の下において起訴せられた事件がたとえ同時に起訴せられたときは併合罪として當然一つの刑の言渡を受け得る場合であつても之が併合審判を爲し得ないことは、被告人の上告趣意について説明した通りであつてそれは舊刑訴法及新刑訴法によつて規定された各審級相互間の訴訟手續上の性格的差異によるものである。そしてかように訴訟手續上の性格的差異に起因しいわゆる舊法事件と新法事件が併合審判し得ないということはつまるところ法律解釋の問題であつて憲法適否の問題ではない。
一 併合罪にあたる數罪を一は新刑訴法施行前に、一はその施行後に各別になした起訴の適否 二 新法事件と舊法事件を併合審理することの可否 三 新法事件と舊法事件につき併合審判を爲し得ない理由と憲法適否の問題
刑法45條,刑訴施行法2條,刑訴法313條
判旨
本来併合罪の関係にある数罪であっても、旧刑事訴訟法下で起訴された事件と新刑事訴訟法下で起訴された事件は、訴訟手続上の性格的差異により法律上併合審判を行うことができない。
問題の所在(論点)
旧刑訴法下で起訴された事件と新刑訴法下で起訴された事件が併合罪の関係にある場合、これらを併合審理し、一つの刑を言い渡すことができるか。また、各別に起訴・裁判することが違法となるか。
規範
併合罪の関係にある数罪であっても、適用される刑事訴訟法(旧法・新法)が異なる場合には、それぞれの審級における訴訟手続上の性格的差異に鑑み、法律上併合審理をすることはできない。検察官が時期を異にして各別に起訴すること、及び裁判所が各事件について別個に刑を言い渡すことは、いずれも適法である。
重要事実
被告人は、旧刑訴法下で窃盗被告事件(旧法事件)を起訴され、その後、新刑訴法下で別の窃盗被告事件(新法事件)を起訴された。これら二つの事件は、同時に起訴されれば刑法上の併合罪として一つの刑が言い渡される関係にあった。被告人は両事件の併合審理を求めたが、原審はこれを排斥し、既に刑が確定した旧法事件とは別個に、本件(新法事件)について懲役4年の刑を言い渡した。
あてはめ
旧法事件と新法事件は、各審級における手続的性格が異なるため、法律上併合審判を行うことはできない。検察官が起訴時期を異にしたことも違法ではなく、既になされた各別の起訴に基づき、裁判所が別個に刑を言い渡すことは法律上当然の帰結である。また、原審が併合審理を排斥する一方で量刑上これらの事情を考慮したことは正当であり、理由不備や憲法違反の瑕疵も認められない。
結論
旧法事件と新法事件の併合審判は認められず、各別に刑を言い渡した原判決に違法はない。
実務上の射程
法の改正に伴う経過措置の期間における特有の議論であり、刑事訴訟手続の同一性が認められない場合(準拠法が根底から異なる場合)には、実体法上の併合罪であっても併合審理が法律上制限されることを示す。
事件番号: 昭和24(れ)2843 / 裁判年月日: 昭和25年4月4日 / 結論: 棄却
論旨は、原判決が被告人を懲役一年六月に處したのは、第一審判決の刑より重い刑を言渡したものであつて、舊刑訴法四〇三條に反するというのである。しかし被告人は、本件第一審において懲役一年以上三年以下の不定期刑の言渡を受けその判決に對して控訴し、また別件第一審において懲役一年の刑に處せられその判決に對して控訴し、原裁判所は右二…