弁護人高橋真三次の上告趣意は、収税官吏が本件犯則事件を調査するためにした臨検、捜索及び差押が国税犯則取締法二条、三条に違反し、憲法三五条に違反すると主張する。しかし、論旨は、原判決そのものがいかなる点において刑訴四〇五条に定める上告理由に当る違法があるかについては、何等具体的な主張をしていない。論旨は、それ故採るを得ない。
具体的な法令違背の主張を欠く上告の適否
国税犯則取締法2条,国税犯則取締法3条,憲法35条,刑訴法405条
判旨
収税官吏による犯則事件の調査としての臨検、捜索、差押えが憲法35条等に違反すると主張する場合であっても、原判決の具体的な違法性を指摘しない上告趣意は、上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
収税官吏による行政調査・犯則捜査の性質を有する強制処分が憲法35条の令状主義に抵触するか、および上告理由として具体的な違法性の指摘が欠けている場合の適法性。
規範
上告趣意において原判決の憲法違反や法令違反を主張する際には、刑事訴訟法405条の定める上告理由に照らし、原判決のいかなる点に具体的な違法があるのかを特定して主張しなければならない。
重要事実
被告人が、収税官吏による犯則事件調査のための臨検、捜索および差押えにつき、国税犯則取締法(当時)2条、3条違反および憲法35条違反を主張して上告した事案。しかし、弁護人の上告趣意書では、原判決のどの部分が具体的にどのような理由で刑訴法405条所定の上告理由に該当する違法を有しているのかが明示されていなかった。
あてはめ
弁護人の主張は、収税官吏の処分が憲法35条等に違反するという抽象的な主張に留まっており、原判決がそれらを認めたこと自体の具体的な論理的・法的な誤りを具体的に指摘していない。したがって、刑事訴訟法405条各号に掲げられた上告理由として有効な形式を備えているとはいえない。
結論
本件上告は具体的上告理由を欠くものとして、刑事訴訟法408条により棄却される。
実務上の射程
憲法35条と行政調査・犯則事件調査の関係性について、本判決自体は実体的な判断を回避し形式不備で退けている。司法試験等の答案上では、具体的違法性の指摘を欠く上告趣意の不適法性を示す際の例証として用いるに留まり、強制処分や令状主義の具体的解釈については、後の川崎民商事件(最判昭47.11.22)等の重要判例を参照すべきである。
事件番号: 昭和26(あ)4282 / 裁判年月日: 昭和27年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として、税務官吏による告発方法の違憲を主張するのみで、原判決自体の違憲を主張しない場合は、適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が税法違反等の罪に問われた事案において、弁護人は税務官吏が行った告発の手続・方法が憲法に違反している旨を上告理由として主張したが、原判決(二審判決…