判旨
判決文に「Aの手を通じて」との記載があっても、判文全体から被告人の単独犯行を認定したものと理解できる場合は、共同正犯の認定を欠く等の違法はない。
問題の所在(論点)
判決書において第三者の介在を示す表現(「Aの手を通じて」)がある場合に、それが直ちに共同正犯の認定を意味するのか、あるいは単独正犯の犯行態様を示したものとして適法とされるのかが問題となる。
規範
判決書の事実摘示に第三者の関与を示唆する文言が含まれていても、判決文を全体として通読し、被告人の単独犯行を認定した趣旨であることが容易に了解できるのであれば、事実誤認や理由不備の違法は認められない。
重要事実
被告人が贈賄罪に問われた事案において、第一審判決の事実摘示中に「Aの手を通じて」贈賄した旨の記載があった。弁護人は、この記載から被告人とAが共同正犯の関係にあることを認定したものであると主張し、共犯関係の法的構成が不明確であるとして憲法31条違反および刑事訴訟法違反を理由に上告した。
あてはめ
第一審判決の判旨を通読すれば、被告人の単独犯行を認定したものであることは容易に了解できる。論旨が指摘する「Aの手を通じて」という記載は、あくまで被告人が単独で犯罪を実行する際の手段や経路を説明したものであって、Aを共同正犯として認定する趣旨ではない。したがって、共同正犯に関する認定がないことを前提とする弁護人の主張は、判決の前提を欠くものである。
結論
被告人の単独犯行を認定したものとして適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
判決書の事実摘示において、実行行為に他者が介在している表現があっても、それが直ちに共同正犯の認定を要求するものではないことを示す。答案上は、道具を用いた単独正犯や、単なる伝達者の介在と評価できる場合の事実認定の許容範囲を検討する際に参照し得る。
事件番号: 昭和25(れ)390 / 裁判年月日: 昭和25年9月8日 / 結論: 棄却
原棄公判廷において證人Aを訊問するに當り、原審が同證人に宣誓をなさしめなかつたことは記録上明らかであるが、舊刑訴法第二〇一條第一項第三號は被告人と共犯關係ありとして、有罪の確定判決を受けた者をも包含するものと解すべきであるから(大審院昭和四年(れ)第四二七號同年五月三〇日判決參照)原審が右證人に宣誓を命じなかつたことは…