一 予備的訴因罰条の追加請求書記載の公訴事実だけでは訴因の明示に欠くる点があるにしても、これを被告人に対する本来の起訴状記載の公訴事実および相被告人に対する起訴状記載の公訴事実と照らし合せて読めば、罪となるべき事実がおのずから特定できる関係にある場合には、右予備的訴因罰条の追加請求も無効ではない。 二 「被告人は甲と共謀の上丁時イ場所において乙より賄賂(一人あたり金三八三〇円相当の酒食の饗応)を収受した」という事実と「被告人は乙と共謀の上丁時イ場所において甲に対し賄賂(金二八三〇円相当の酒食の饗応)を供与した」という事実とは、公訴事実の同一性を失わない。 三 贈賄の共同正犯の起訴に対し、訴因罰条の変更手続を経ることなく、裁判所がこれを贈賄の幇助と認定しても違法ではない。
一 予備的訴因罰条の追加請求と罪となるべき事実の特定 二 公訴事実に同一性の認められる一場合 三 贈賄の共同正犯の起訴を訴因罰条の変更手続を経ることなく贈賄の幇助と認定することの適否
刑訴法312条,刑訴法256条,刑訴規則209条,刑法197条,刑法198条,刑法62条
判旨
公訴事実の日時、場所、対象、および行為の内容等の具体的事実関係が同一である限り、訴因の追加は公訴事実の同一性を失わないものとして適法に認められる。
問題の所在(論点)
訴因の予備的追加がなされた場合において、追加された事実が当初の公訴事実と日時、場所、行為等の具体的態様において共通する場合、公訴事実の同一性が認められるか。
規範
訴因の追加(刑事訴訟法312条1項)が許されるための要件である「公訴事実の同一性」は、公訴事実の日時、場所、相手方、及び行為の内容等といった具体的事実関係を総合して判断し、これらが共通している場合には、公訴事実の同一性は失われない。
重要事実
被告人に対し、当初の起訴状で公訴事実が記載されていたが、検察官は後に「予備的訴因(罰条)追加請求書」を提出した。この追加請求書に記載された公訴事実は、贈賄者側が所得決定資料の調査に関し好意的取り計らいを受ける趣旨で提供したものであるという情を知って行為に及んだという内容であった。弁護人は、この訴因追加が不当であること等を理由に上告した。
あてはめ
本件における予備的訴因追加請求書に記載された事実は、本来の起訴状に記載された公訴事実および相被告人に対する起訴状の記載内容と関連付けて解釈すると、贈賄の情を知っていたという主観的要素を補足するものである。具体的事実関係を対照すると、行為の日時、場所、人、および行為の内容等の核心的な事象がすべて一致している。したがって、法的な評価や一部の態様に差異が生じたとしても、事実関係の基礎において同一であるといえる。
結論
本件の訴因追加は公訴事実の同一性を失わないため適法であり、原判決の判断に誤りはない。
実務上の射程
訴因変更(追加)の可否を検討する際、事実関係の共通性(日時・場所・行為態様等)から公訴事実の同一性を肯定する基本的な判断枠組みを示すものである。答案上は、新旧訴因の具体的構成事実を比較し、社会的事象としての近接性・共通性を指摘する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2167 / 裁判年月日: 昭和26年3月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決文に「Aの手を通じて」との記載があっても、判文全体から被告人の単独犯行を認定したものと理解できる場合は、共同正犯の認定を欠く等の違法はない。 第1 事案の概要:被告人が贈賄罪に問われた事案において、第一審判決の事実摘示中に「Aの手を通じて」贈賄した旨の記載があった。弁護人は、この記載から被告人…