本件において麻藥の取得が同時であつても、後になつて態々麻藥の所持を分割して一は被告人自身で直接に所持し他はAに保管させて間接に隠匿所持したものであつて、原判決がかかる状況の下においては社會通念上二ケの所持があると見るのを相當とする旨を判示したのは正當であり、右は當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第九五六號同二四年五月一八日大法廷判決)にそうものであつて之に反するものではない。
麻藥の直接所持と間接所持は二箇の所持罪を構成するか
麻藥取締法3條
判旨
麻薬の取得が同時であっても、後に所持を分割して一を直接所持し、他を他人に保管させて間接に隠匿所持した場合は、社会通念上二個の所持が成立する。また、犯罪構成事実の一部としての認識日時の多少の齟齬は、犯罪の成立に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
1.一括取得した麻薬を自己所持と他人への保管に分けた場合、麻薬所持罪は一個か二個か。2.犯罪事実の認定において、認識の時期に多少の齟齬があることは判決に影響を及ぼすか。
規範
麻薬の所持については、その取得が同時であったとしても、その後の所持の態様を個別に検討すべきである。具体的には、所持を分割して自ら直接所持する部分と、他人に保管させて間接的に隠匿所持する部分に分けた場合には、社会通念上の独立性を有するものとして、別個の犯罪(併合罪)が成立し得る。また、犯意(認識)の発生時期については、具体的日時に多少の齟齬があっても、犯罪の成立そのものを左右するものではない。
重要事実
被告人は、当初一括して取得した麻薬を、後に分割した。一部は被告人自身が直接所持し、残りの一部は知人(A)に預けて保管させ、間接的に隠匿所持した。第一審は、被告人が麻薬であることを認識した時期を昭和24年6月2日頃と認定したが、被告人側は、認識時期の認定や所持が単一であること、及び他罪で控訴保釈中の犯行であることを量刑上の情状とした点の不当性を主張して上告した。
あてはめ
麻薬の取得が同時であっても、その後に被告人があえて所持の態様を分割している点が重要である。一方は自ら直接手元に置き、他方は他人に預けて隠匿するという行為は、社会通念上、それぞれ独立した所持行為として評価できる。したがって、包括的一罪ではなく二個の所持と解するのが相当である。また、認識の時期については、被告人の公判供述から特定の時期以降に認識があったと認められれば足り、証拠上の日時と認定に多少の差があっても、所持罪の成立を妨げるものではない。
結論
本件において二個の所持があるとした原判決は正当である。また、認識時期の認定に関する齟齬や量刑上の判断も適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
数個の物を同時に取得しても、その後の管理・支配の態様(保管場所や保管者の分離)が分断されている場合には、社会通念を基準に別罪の成立(併合罪)を認めるのが判例の立場である。罪数論における「所持」の継続性と分離可能性を検討する際の指標となる。また、故意の成立時期に関する認定の厳格性についても、実務上の柔軟性を示している。
事件番号: 昭和26(あ)2207 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
麻薬の譲受とその譲受けた麻薬の所持が、仮りに、所論のごとく、法律上牽連一罪であるとしても、本件では譲受行為が二回あり、且つ譲受行為が千葉市であり、その譲受けた麻薬が東京都内に運搬され、しかも、譲受けた被告人以外の他の被告人も参加して同都内において所持されたものであるから、譲受行為とは別に独立した所持行為があつたものとも…
事件番号: 昭和24(れ)2770 / 裁判年月日: 昭和25年7月21日 / 結論: 棄却
麻藥取締規則(昭和二一年厚生省令第二五號)施行中において不法に麻藥を所持した行爲とその所持者が自らこれを自己の身体に使用した行爲とは各別罪を構成する