判旨
犯罪後の法令改廃により刑が廃止された場合でも、その改廃が単なる事実上の変遷に基づくものであれば、刑法6条及び刑訴法337条2号(旧刑訴法363条2号)は適用されず、処罰される。
問題の所在(論点)
犯罪後に処罰の根拠となる法令(告示)が廃止された場合、刑法6条の「犯罪後の法律により刑が変更されたとき」や刑訴法337条2号の「刑の廃止」に該当し、処罰を免れるか。
規範
犯罪後の法令改廃による刑の廃止が、刑の変更(刑法6条)や免訴(刑訴法337条2号)を基礎付けるのは、法令の変更が法律的見解の変更に基づく場合に限られる。これに対し、経済情勢の変動や物資需給の調整等、単なる事実上の変遷に伴う一時的な措置としての改廃にすぎない場合には、依然として処罰を免れない(いわゆる限時法・事実上の変遷の理論)。
重要事実
被告人が犯行を行った後、当該犯行の根拠となっていた告示が廃止された。被告人は、犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当するとして、免訴(または刑の不適用)を主張して上告した。
あてはめ
本件における告示の廃止は、先行する大法廷判決(昭和25年10月11日)の趣旨に照らせば、法律的見解の変更に基づくものではなく、単なる事実上の変遷(経済的事情等の変化)に伴うものと解される。したがって、犯罪時の法令がそのまま適用されるべきであり、法令の改廃がなされた後であっても、本件被告人に対して刑を科すことに妨げはない。
結論
犯罪後の告示廃止は事実上の変遷にすぎず、刑の廃止には当たらないため、免訴とせず有罪とした原判決は妥当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
「法律的見解の変更」か「事実上の変遷」かの区別を論じる際のリーディングケース(大法廷判決)を引用した決定。答案上は、法令廃止が政策的・技術的な理由に基づくものか、それとも処罰自体を不当とする反省的考慮に基づくものかを検討する際の規範として用いる。
事件番号: 昭和25(あ)2314 / 裁判年月日: 昭和26年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の行為後、同令に基づく統制価格の告示が廃止されたとしても、刑法6条や刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令3条に違反する行為を行ったとして起訴された。しかし、第一審判決が認定した事実の前提となる物価庁…