所論昭和二三年(れ)第一一二号、同年七月一四日大法廷判決の判例は「自白を補強する証拠はそれによつて自白の真実であることが肯認され得るものであることを要するが補強証拠の種類については法定の制限はない」云々と言い、共同被告人の供述と難も補強証拠たるに妨ない趣旨を判示したものであつて「被告人の自白の真実である事が肯認され得るもの」云々の意味は前掲昭和二四年(れ)第八二九号、同二五年一一月二九日大法廷判決に「被告人の自白の真実性が保障せられると認められる」云々というのと同趣旨であつて、それ以外何等特別の判示をしたものではない。
一 「被告人の自白の真実であることが肯認され得るもの」云々の意味 二 補強証拠としての共同被告人の供述
憲法38条3項,刑訴法319条2項
判旨
憲法38条3項及び刑訴法319条1項の補強法則に関し、犯意等の主観的構成要件については、客観的構成要件について補強証拠があり自白の真実性が保障される限り、自白のみで認定できる。
問題の所在(論点)
犯罪の主観的構成要件(犯意や知情等)について、被告人の自白以外に独立した補強証拠が必要か。また、客観的事実の証明がある場合に、自白のみで主観的要素を認定することが許されるか。
規範
自白の補強法則(刑訴法319条1項)において、補強証拠は自白の真実性を保障し得るものであれば足り、証拠の種類に制限はない。特に犯罪の主観的構成要件については、客観的構成要件(犯罪の客観的事実)について他に確証があり、自白の真実性が保障されると認められる場合には、当該主観的要素の直接証拠が被告人の自白のみであっても、各証拠を総合して犯罪事実全体を認定することが可能である。
重要事実
被告人が贓物故買(現在の盗品等有償譲受け)の罪に問われた事案。第一審判決では、贓物故買の客観的事実については被告人の自白以外の証拠によって十分に証明されていたが、被告人がその物品を贓物であると知っていたかという「知情(主観的要素)」の点については、公判廷外における被告人の自白のみが直接の証拠となっていた。弁護人は、主観的要件についても補強証拠が必要であるとして上告した。
あてはめ
本件において、第一審判決が挙げた証拠により、贓物故買の客観的事実は十分に確定されている。このように客観的構成要件に該当する事実について他に確証がある場合、自白の真実性は客観的に保障されているといえる。したがって、主観的要件である「知情」の点について直接の証拠が被告人の自白のみであったとしても、補強法則の趣旨に反するものではなく、犯罪事実全体の認定は適法である。
結論
主観的要件については自白のみによる認定が可能であり、客観的事実に補強証拠がある本件では、憲法38条3項及び刑訴法319条1項の違反はない。
実務上の射程
実務上、補強法則の対象は「罪体(客観的事実)」に限定されるという実質説を支える判例として機能する。答案上は、補強証拠が必要な範囲を論じる際、犯意などの主観的要素については客観的事実の補強があれば足りるとする根拠として引用する。また、共同被告人の供述が補強証拠になり得る点も示唆しており、証拠能力・証明力の文脈でも活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1698 / 裁判年月日: 昭和26年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白の補強証拠は、犯罪の客観的事実について必要とされるが、犯意等の主観的要件については、自白が架空のものでないと認められる限り、自白のみで認定しても憲法38条3項等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が盗品等有償譲受けの罪で起訴された事案。第一審判決は、被告人の自白、共犯者の公判供述、および被…