被告人には他の共犯者との間に相互の意思連絡がないことを前提として、原判決が最高裁判所の判例に違反すると主張するのである。しかし、第一審判決の掲げる証拠によれば同判決認定の事実は十分認められ、同判決は被告人と他の共犯者との間には相互する意思の連絡のあつたことを認定している。すなわち、所論判例(昭和二三年(れ)第一六六八号同二四年二月四日第二小法廷判決参照)にいわゆる共同犯行の認識があつた事実を認定しているのである。されば所論は、第一審判決の認定と異る事実を前提とする主張であつて、第一審判決及びこれを是認した原判決は何等前記判例に反する判断をしたものと言うことはできない。
第一審判決の認定と異る事実を前提として第一審判決及び原判決の判例違反を主張する上告の適否
刑訴法405条2号
判旨
共同正犯が成立するためには、共犯者間において相互に犯罪を実行する意思の連絡(共同犯行の認識)があることが必要である。本件では、被告人と他の共犯者との間に相互の意思連絡があったと認められるため、共同正犯の成立が肯定された。
問題の所在(論点)
刑法60条の共同正犯の成立要件として、共犯者間に「相互の意思の連絡」が必要か、またその認定が正当かどうかが問題となった。
規範
刑法60条の共同正犯が成立するためには、複数人が共同して犯罪を実行する客観的事実に加え、主観的要件として、共犯者相互間に犯罪を共同して遂行しようとする「意思の連絡」があることを要する。これは、いわゆる共同犯行の認識を共有していることを指す。
重要事実
被告人が他の者と共に犯罪を実行したとされる事案において、被告人側は他の共犯者との間に相互の意思連絡がなかったと主張して上告した。第一審判決では、掲げられた証拠に基づき、被告人と他の共犯者との間に相互に犯罪を共同する意思の連絡があったと認定され、原審もこれを維持した。具体的な犯罪事実の内容や共犯者の氏名等の詳細は、本判決文からは不明である。
あてはめ
本件において、第一審判決が掲げる証拠を精査すると、被告人と他の共犯者との間には単なる並行的な動作にとどまらず、相互に犯罪を共同して行うという認識、すなわち「意思の連絡」があったと認められる。被告人側は意思連絡の欠如を前提に判例違反を主張するが、認定された事実に照らせば、判例が要求する共同犯行の認識という主観的要件を充たしていると評価できる。
結論
被告人と共犯者との間に相互の意思連絡(共同犯行の認識)が認められる以上、共同正犯の成立を認めた原判断に判例違反はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
共同正犯の主観的要件である「意思の連絡」の必要性を再確認した判例である。司法試験においては、実行共同正犯の成立を論じる際に、共謀の存在を示すキーワードとして「相互の意思連絡」や「共同犯行の認識」を用いる際の根拠となる。
事件番号: 昭和26(あ)1790 / 裁判年月日: 昭和27年11月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同正犯の成立において、共犯者全員の具体的な判示は必ずしも必要ではなく、判例の趣旨に照らし共同正犯の構成要件を充足する判示がなされていれば足りる。また、量刑不当や単なる訴訟法違反の主張は、刑訴法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が共同正犯として起訴され、有罪判決を受けた事…